現代にSNSを使わない人がいるだろうか。ネットを通して情報を発信しない人、受け取らない人がいるだろうか。SNSやブログ、メール等を通じ、ほとんどの人が何かしら文章を書くだろう。今回紹介する本は、ネットで何かを発信する際に必要な、現代に合った文章術に関する本である。
『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』
著者:成毛 眞(なるけ まこと)
北海道札幌市出身。
大学卒業。自動車部品メーカー、アスキーなどで勤めた後、1991年よりMSKK代表取締役社長。
現在HONZ代表、スルガ銀行株式会社の社外取締役。
様々なベンチャー企業の取締役・顧問などを兼職。
早稲田大学客員教授も務める。
『本は10冊同時に読め!』(三笠書房)、『成毛式実践マーケティング塾』(日本経済新聞社)など、著作・連載多数。
Contents
『バズる書き方』どんな人にお勧め?
この本はタイトル通り、SNSやブログなどを通して「バズる発信がしたい人」つまり、沢山の「フォロワー」を味方につけ、「いいね!」や「シェア」がたくさん必要な人にお勧めだ。
- 仕事として商品の広告や宣伝のために情報を発信している人
- 再生回数やクリック回数でお金を稼いでいる人
- 単純に「いいね」や「シェア数」を趣味とし、フォロワーとのつながりを楽しみにしている人
ただ、個人的には、ネットで何かしら情報を発信する「すべての人」にこの本を読んで欲しい。
つまり、こんな人にもお勧めだ。
- 日記感覚で投稿している
- バズる必要はないが、友人や特定の人に情報を伝えたい。共感を得たい
- 万人受けは求めていないが、理解してくれる人からの「いいね」は嬉しい
それは何故か。
この本は、ネットであなたの投稿が「バズる」ための文章術を記載した本だ。
そして同様に、「炎上」「誹謗中傷」といった、SNSを通して起こりうるトラブルを回避する手段についても細かく記載されている。
SNSは、気軽に日記のように利用したい、強いて言うなら、誰かがちょっと共感してくれたり、驚いてくれたら嬉しい。
それだけのはずか、意図せずして起こる知らない人からの炎上やバッシング。
誤解から生まれるものもあれば、クレーマーに目を付けられることもある。こうしたトラブルを避ける方法も提示されているのだ。
『バズる書き方」はシンプルに読んで面白く、この本自体がバズる書き方そのものである
さて、本書の特徴だが、一言でいうと、著者の言い回しや、引用されている「投稿例」がとても面白い。
感覚として残りやすく、頭に入りやすいのだ。
例えば、「目には優しいが親指には過酷な投稿」
こちらはスマホで読みにくい文章を説明する時に使った表現だ。
他にも、文章を書くことを「芸術より工芸に近い」と説明したり
「正しい文法よりもリズム感が大切だ」と音楽的な手法を例に挙げていることもある。
全く堅苦しくなく読みやすいのだ。
面白いだけでなくその理由も納得いく形で書かれている。
投稿例に関しても挙げてみよう。例えば、文章の校正ポイントとして、修正前と後の違いとして掲載した投稿に、ポンと、ビル・ゲイツが出てくる。別の投稿例では、「桜を見る会」に経産省から招待されたが3回シカトした話が載っていたり、またある時はホリエモンが出てきたり…。
思わず、例として挙げられている投稿を「ん?」と詳しく読み進めてしまう。
これこそ、思わず先を気にしてクリックしてしまう、シェアしてしまう文章そのもの。
つまり、この本自体が、作者の述べる「バズる書き方」そのものである。だからこそ、本の内容にもとても納得がいく。
また、著者である成毛眞さんの経歴が凄いのだ。
日本マイクロソフト株式会社の元取締役社長であり、実はビル・ゲイツの代わりに彼のサインを手紙に書いていたこともあるという。
それが、本書の中に嫌味なく、さらっと出てくるのである。
『バスる書き方』とはどんな本なのか
本書は、ネット版の国語の教科書のような本だ。
義務教育で習った文法や正しい言葉遣いと、SNSでバズる書き方は必ずしも同じではない。
本書では、SNS等で適度に読みやすい漢字や慣用句の使い方、段落、読点のタイミングなどが分かりやすく記載されている。スマホで読みやすい文章ともいえるだろう。
それでいて、読者から信頼を得るために最低限必要なルール、例えば、誤字脱字などの校正の大切さ、その方法もきちんと説明されている。
無理なく気軽に読みながら、文章を書くうえでの基礎知識が身に付くというわけだ。
では最後に、この本の内容に少し触れようと思う。
『バズる書き方』における「誰でも書き手になれる」とは?
今の時代、誰でも書き手になれる。それどころが、日々難しい論文を書き上げる学者、プロの編集者等よりも、何気なく日々のネタを発信するアマチュア、つまり文章とは無縁の世界で生きている一般人の方がSNS上で大うけする、「バズる」可能性は高い。そう著者は述べている。以下のような理由からだ。
- SNSで誰でも自由に発信できる
- 発信にお金はほどんどかからない
- 難しい言葉を使える人より、一般の人の方がクリック回数は上がる
持っている資産や、経歴など関係ない。
あなたの投稿した文章が誰かの目に留まり、いいねされ、シェアされ、一度広がっていけばあっという間にあなたは「バズる文章の書き手」となるわけである。
では、プロよりも一般人の方がバズる可能性があるのはなぜだろうか。
読みやすい文章は、頭のいい中学生が書いた文章
もちろん、誰かに文章を読んでもらうにあたり、ある程度の文法の理解や、語彙力は必要である。
しかし、著者が述べる必要な知識は「小学生~中学生レベルの国語力」
そして、最も読みやすいのは、「頭の良い中学生が書いた文章」
つまり、難しい言葉を使う必要はない、と述べているのだ。
むしろ、普段から難しい言葉や専門用語を使い慣れている学者やプロの世界の人は、一般の人には読みにくい文章を作ってしまう癖があるのだという。
炎上せず、『バズる書き方』をするために気を付けること
著者は、単にバズる書き方だけでなく、読者に「誤解されない書き方」についても細かく記載している。これがすべての人に本書を読んで欲しいともいう理由である。
- 気軽だからこそ真剣に
- 孫引きしない
- 何度も見直す
そのポイントをいくつかご紹介したいと思う。
気軽だからこそ真剣に
誰の評価も全く気にしないのならば無視してもよいポイントかもしれない。
しかし多少なりとも「いいね」が欲しい、誰かに読んでほしい文章を書くなら、読み手のことを考えて投稿することは大切だ。
また、投稿が自分の真意とは違う形で受け取られ、誹謗中傷、コメントを受けることがある。
その怖さは、バッシングや炎上そのものだけでなく、誹謗中傷してくる人の影響で、「まともなフォロワー」にまで誤解される可能性があることだ。
しかも、大多数のまともなフォロワーほど、下手にコメントをせず、静かにあなたの投稿を読んでいる。
たとえあなたを誤解したとしても、それを告げることなく、黙ってあなたをフォローから外してしまうのだ。
誤解される書き方を防ぐにためにも真剣に書くことは重要である。
孫引きしない
孫引きとは、わかりやすく言うと、「裏が取れていない情報」である。
「(A)がこう書いている、と(B)が書いている」というような発信の仕方である。
情報にあふれ、それらを簡単にシェアできる現代。原本の資料を見ないまま誰かの口コミのみで真意を判断しがちになる。しかし、それは時に間違った内容となり、読者の信頼を失う可能性がある。
本書では、もし、誰かの情報を引用する場合の注意点も記載している。
何度も見直す
本書では、何度も「推敲」すること、つまり投稿を修正したり、書き加えたりする大切さを述べている。
誤解を招く投稿を防ぐため、間違った情報を掲載しないためにも、自分の書いた文章を一度見直し、手を加えることは大切だ。
推敲するといっても何に気を付ければよいのか、どこまで修正を加えるべきか、そうした内容も記載されている。
終わりに
著者は現代を「一億総書き手時代」と述べている。つまり、すべての人が書き手であり、読み手の時代なのだと述べている。ぜひ本書を活用し、有意義なネット投稿に繋げてほしい。