これからご紹介する本は、仕事で日々文章を書く人で、もっと「速く書けるようになりたい人」にお勧めだ。
速く書けるだけでなく「わかりやすくて、読みやすい文章」を今までよりも10倍速く書けるようになれる。
例えば以下のような人だ。
- ボーナス前のレポート
- 日々の日報
- 取引先や上司に提出する企画書
- メールのやりとり
日々何かしらの文章作成に時間を取られている人は多いだろう。
それらが今の10倍速く仕上がり、それもより相手に伝わる文章になればどうだろう。上司から再提出や修正の指示が減り、あなたは時間的、精神的ゆとりができ、仕事の効率もあがるにかもしれない。
また、こんな人にもお勧めする。
コピーライティングや、文章で稼ぐことに興味のある人だ。
書くことを趣味ではなく仕事にするならば、速さも必要である。どんなに良い文章でも執筆に時間がかかり過ぎたらお金にならない。
また、小説とビジネス文章では、書く前の準備段階から取り組み方は異なってくる。
それを理解せず、小説を書くような進め方をしていると、執筆に膨大な時間がかかるだけでなく、需要の無い、読まれない、稼げない文章になってしまうかもしれない。
本書は、「ビジネス」ですぐに使える文章を書く考え方、ノウハウが記載されている。
Contents
10倍速く書ける 超スピード文章術
著者:上阪 徹(うえさか とおる)
ブックライター 加えて、ネットでの連載、著名人へのインタビューや企業レポートの記事などの執筆業務に携わる。
- 担当した書籍は100冊以上
- 「上阪徹のブックライター塾」塾長
- 1冊10万文字程を4~5日で書き上げる
- フリーランスになって一度も締め切りを破ったことが無い
超速筆ライターとして、締め切りを徹底して守り、業界からも信頼を置かれている著者だが、駆け出しのころは300文字のコピーを書くのに丸1日かかっていたという。文章を書くのが苦手で悩んでいたというのだ。そんな彼が、経験を通して生み出した「速く書ける文章術」だからこそ、誰でも参考にすることができ、結果が現れる内容となっているのだろう。
本書の読み方としては、一度ざっと目を通すのをおすすめする。
本書の最後には、実際の原稿を使い、本に書かれたノウハウを原稿に落とし込む手順が載っている。内容は、自分が実践しているかのように分かりやすい。無理にノウハウを理解しようとせずとも、最後まで読めば、スピード文章術がすっと頭に入ってくるだろう。
800字、2500字、5000字といった文章量に分けて原稿例があるのでより参考にしやすい。
仕事で文章を書くにあたり、間違いやすい認識があるという。代表する認識2つをあげてみよう。
ビジネスにおいて、小説のような「美しい文章」や「うまい文章」は必要ない。求められるのは「わかりやすくて役に立つ文章」である。
筆者はLINEを例にあげている。
文章の得手不得手に関係なく、多くの人はLINEでは抵抗なく文章が書ける。それはなぜか。
目的が「表現」より「要件」だからである。
LINEで交わされるのは、「うまい言い回し」ではなく、必要な要件のみ記載した「簡潔な情報」だからである。
これはビジネス文章にも当てはまる。しかし実際は、内容よりも表現方法にとらわれ、文章作成に無駄な時間を費やしている人は多い。うまい言い回しや、斬新なアイデアよりもっと重要なことがある。それについて本書では説明されている。
文章を書くとは、「聞く」、「体験する」、「感じる」といった「情報を集める」ことであり、それが一番重要だと筆者は述べている。
そうした情報を、筆者は「素材」と呼んでいる。
文章が書けない、時間がかかるというあなた。あなたは文章を書く前に、必要な素材を全てそろえてから書き始めているだろうか。
どんな優秀な記者もコピーライターも最初に素材を集める。そして、必要な素材が「全て」揃ったら記事を書くのだ。
「文章は素材、つまり事前の情報が9割」
本書には、文章を書く際に素材がどれだけ重要か、その例として、トヨタと成城石井を題材とした2つの原稿が掲載されている。
トヨタの原稿に関しては、3つのワード以外は全て素材で出来ている。
成城石井の記事に関しては、400字の文章「全て」が素材となっている。
つまり、原稿はゼロから頭で考え、自分でひねり出すものではない。集めた素材がほぼ中身を決めるのである。
小説と、ビジネス文章は別物なのである。
長い文章も短い文章も同じで、違いは「素材の量」だと筆者は述べている。
本書には、800字の短い原稿と、5000字の原稿の書き方が記載されているが、手順として大きく変わるのは素材の量だけである。
実際に読んでみるとその意味が分かるだろう。
最後に、上阪式スピード文章術の流れを見てみよう。
本書では、執筆を始める前の情報収集が最も重要で、時間を費やすべきだと述べている。
また、この文章術は、読者のことを徹底的に考えた内容となっている。それが、分かりやすく、読まれる文章に繋がっている。
流れとしては以下のような形だ。
- 目的と読者を決める
- 一番重要であり、時間がかかるのは素材集め
- 集めた素材をまず順番に並べ替えてから執筆に入る
- 文章は一気に書く
- 素材は、「たくさん集めて、あとで削る」
- 推敲は必ずするが、完璧主義にならないこと
- 推敲は全体から部分的に。初見を大切に
- 目的と読者を決める
これは、素材を集める前に取り組む重要なことだ。目的とは文章のテーマに近い。レポートなのか、エッセイなのか、企画書なのか。
さらに、表面上の目的だけでなく、真の目的も把握しているかどうかが文章の仕上がりを大きく変えると著者は言う。
例として、雑誌に掲載する福山雅治へのインタビューが載っている。
著者が依頼者から伝えられた目的(テーマ)は「読者を元気づけること。雑誌の読者は60代」だった。
しかし、深掘りしていくと、このインタビューの真の目的は「40代の読者層を捕まえること」だったのである。
著者が、真の目的を理解せずに素材を集め、執筆していたら、完成した原稿は依頼者の意図したものと異なっていた可能性が高い。
- 一番重要であり、時間がかかるのは素材集め
- 集めた素材をまず順番に並べ替えてから執筆に入る
執筆途中に素材が足りず、もう一度素材集めに戻ること。これが一番やっかいで原稿に時間がかかってしまう原因であると著者は述べている。
電車の中、ジムのランニング中、日々の生活の中で素材を集める意識が大事であり、思いついた素材をメモを取れる状況を作ることが重要だと述べられている。
ポイントは、「沢山集めて後で削る」ことだ。
素材を並べ替え、現行の構成を決めてから書き始めることで、素材不足の可能性をより防ぐことができる。
著者の経験則において、書き手が途中で何度も止まりながら書いた文章は、読みにくい文章になりやすいという。
加えて、「この表現はもっと適切なものがありそう」などといった「迷い」は執筆のスピードを遅くする。
まずは、誤字も脱字も気にせずとにかく流れにそって書き切ることが大切だと述べている。
その上で、読みやすい文章になる7つのポイントも記載している。
- 推敲は必ずするが、完璧主義にならない
- 推敲は全体から部分的に。初見を大切に
誤字脱字も気にせず、一気に書き上げた文章を推敲するのは大変では?と思う人もいるかもしれないが安心してほしい。無駄無く、素早く取り組めるノウハウがきちんと紹介されている。
また、何度も細かく見直すことよりも、「初見」を大事にすることが、読みやすさに特化し、読者を考えた文章の書き方に繋がっている。
推敲の段階では、文章のわかりにくさ徹底的につぶしていくポイントや、文字数を削る必要がある場合の手順も記載されている。
以下のような人は、書くことに無駄な時間を費やし、かつ、わかりにくい文章を書いている可能性がある。
- 文章とは、頭で考え、うまい言い回しで書くべきだと考えている人=小説とビジネス文章が混同している人
- 素材集めをさぼっている人
- 文章の表現方法など、素材集めよりも考えることに時間を費やしている人
- 書くまでの準備段階や取り組み方がずれている人
その結果、「書くことへの苦手意識が抜けない」「仕事にしたくても稼げずに挫折してしまう」ということが起こっているかもしれない。
本書を参考に、文章の書き方を見直してみてはいかがだろうか。
- 小豆太
- 南の島国出身
- 求人広告営業、フィットネスクラブ、日本文化体験インストラクター等の仕事を経験
- 旅行やキャンプ、スイーツめぐり、身体を動かすことが好き