コミットメントと一貫性の原理をコピーライティングに応用する3つの方法

コピーライティングとは「文章で読者に行動を起こさせる技術」のことである。

読者に行動を起こさせるには、当然ながら人間の心理を理解しておかなければならない。

しかしコピーライターを目指す多くの人々はこんな疑問を持つのではないだろうか。

「読者に行動を起こさせるための具体的なテクニックがわからない」

効果的なコピーライティングを身につけたいなら「一貫性の原理」を知っておくべきだ。

この記事では人間心理の1つである「一貫性の原理」のポイントと、その応用方法について解説する。

「一貫性の原理」を理解することで、自分の文章に自信を持ってもらうことがこの記事の狙いである。

「コミットメントと一貫性の原理」とは何なのか

1984年にロバート・B・チャルディーニ氏によって書かれた『影響力の武器』という本をご存じだろうか。

アメリカを代表する社会学者である彼は、同著の中で人間心理に基づく6つのアプローチ方法を提唱している。

  • 返報性
  • 希少性
  • 権威
  • コミットメントと一貫性
  • 好意
  • 社会的証明

ここでは「一貫性の原理」についての概要と、コミットメントが果たす役割について解説する。

「一貫性の原理」のメカニズム

人間は「自分の意志で決めた事に対して最後まで一貫した態度でいたい」という心理を持っている。

なぜ人は自分の決めたことを途中で変えたくないのだろうか。

その理由としては、以下の2つが有力視されている。

  • ​一貫性を保つことによって社会的信用を得ることができ
  • 1度決めたことを貫き通すことで選択の回数を減らすことができる

マンガの1冊目を買うと新刊が出るたびに買い続けてしまったり、見始めた映画がおもしろくなくてもつい最後まで見てしまったりするのは、一貫性を重視した行動と言えるだろう。

ちなみに自分の心の内で決めたことよりも、周りの人に宣言したことの方がより強く「一貫性の原理」が働くと言われている。

「コミットメント」が果たす役割

自分で決めた目標は、周りに宣言することでより「達成したい」という気持ちが強まる傾向がある。

個人的な思いとして内に秘めるのではなく、他者も巻き込んで自分の意見として約束すると、周りの目を気にして一貫性を保とうとするからだ。

例えばダイエットをしたい場合、「〇月までに体重を〇kg落とす」と宣言して始めた方が成功する確率は高くなるだろう。

「コミットメントと一貫性の原理」から派生した心理テクニック

ここまで「コミットメントと一貫性の原理」の概要について解説してきた。

ここからはその応用として、人間の「一貫性を保ちたい」という傾向を利用した心理テクニックを3つご紹介する。

  1. フット・イン・ザ・ドア・テクニック
  2. イエスセット
  3. ローボール・テクニック

上記の心理的アプローチ方法は一貫性の原理を利用しているのが共通点だが、それぞれ切り口が異なっている。

シチュエーションごとに使うべきアプローチ方法を選べるように、3つのテクニックの細かな違いをチェックしてほしい。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック

「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とは、本命の要求を通すために先に簡単な要求をして了承を得てから、段階的に要求レベルを上げていく心理的アプローチである。

はじめにハードルの低い要求に対して同意を引き出すことが重要だ。

そうすることで相手はその後の要求に対しても同意の姿勢を維持したくなる。

イエスセット

「イエスセット」とは、何度も同意の反応を取り付けることで、すぐに反論できなくさせる心理的アプローチである。

このテクニックを使うときに重要なのは、かならず同意が得られるような簡単な話題を選ぶことだ。

なお同意の反応を3回以上引き出した後に、本命の要求を提示すると良い反応がもらいやすくなる。

ローボール・テクニック

「ローボール・テクニック」とは、好条件だけを提示して承諾を得た後に、悪い条件を付け加えたり、好条件の一部を撤回する心理的アプローチである。

前述の「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と同様に、最初に同意を取り付けることでその後に条件の変更があったとしても同意を取り付けやすくなる。

ただし「ローボール・テクニック」は、相手にとって不都合な条件を後から付け加えることで、信頼を失ってしまう可能性があるので注意が必要だ。

「コミットメントと一貫性の原理」をコピーライティングに応用する方法

ここまで「コミットメントと一貫性の原理」から派生した心理的アプローチ方法の代表的な例3つについて解説してきた。

これらの心理的アプローチ方法は交渉術として営業トークに利用されることが多いが、記事や広告などのコピーライティングにも応用可能である。

ここからは一貫性の原理に基づく心理的アプローチ方法を文章に落とし込むときのポイントを、具体的な例を挙げて紹介する。

「自分の書いた文章で読者に行動を促したい」というコピーライターはぜひ参考にしてほしい。

冒頭で小さな同意を得る

1つ目に紹介するコピーライティングのテクニックは「記事の冒頭で思わず同意してしまうような問いかけを行う」ことである。

具体例を使って解説すると、以下のよう流れになる。

記事の目的ペットの犬用に開発された健康補助食品を売り込みたい
冒頭文自宅で飼っているワンちゃんの健康管理ができるのは、いつも一緒に生活している飼い主さんだけですよね?
読者の心理同意
(ペットの犬を健康に育てる人として一貫性を保ちたくなる)

上記の例は「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」をコピーライティングに応用する場合を想定している。

記事の冒頭で多くの人が同意・承諾するような問いかけをすることにより、読者は「問いかけに同意した自分」の一貫性を持った状態でその後に続く文章を読みすすめる。

そして文末に行動を促す文章(上記の例の場合は犬用の健康補助食品が購入できるサイトへの誘導)を入れることで、記事の目的を達成できる可能性が高まるのである。

文中に同意が得られる質問を繰り返し入れる

2つ目に紹介するコピーライティングのテクニックは「記事の途中で同意を得られる質問を複数回した後に本命の問いかけを行う」ことである。

具体例を使って解説すると、以下のよう流れになる。

記事の目的オーダーメイドスーツの通販購入を勧めたい
1度目の質問ピシッとしたスーツを着ているビジネスマンは第一印象が良いですよね?【YES】
2度目の質問既製品のスーツだと自分の体格にぴったりのものが見つからないこともありますよね?【YES】
3度目の質問オーダーメイドスーツは高額で手が出しにくい印象がありますよね?【YES】
本命の要望通販でオーダーメイドスーツを注文することで全て解決できます

上記の例は「イエスセット」をコピーライティングに応用する場合を想定している。

記事の中で複数回(少なくとも3度)同意を得られるような問いかけをすることで、一貫性の原理により読者はコピーライター側の本命の要望にも【YES】で応えやすくなる。

そのうえで文末に行動を促す文章(上記の例の場合はオーダーメイドのスーツが購入できる通販サイトへの誘導)を入れることで、読者がコピーライター側の本命の要望にもポジティブな印象を持つ可能性が高まるのである。

デメリットや注意点は後から提示する

3つ目に紹介するコピーライティングのテクニックは「読者にとって好都合な情報を先に提示して、不都合な情報は後から補足する」ことである。

具体例を使って解説すると、以下のよう流れになる。

記事の目的通販サイト経由で商品を購入してほしい
好都合な情報①初回限定特典付き②業界最安値③全品50%OFF
不都合な情報①限定特典を受けるには定期購入が必須②業界最安値なのは一部の商品のみ③全品50%OFFなのは一部のカテゴリの商品のみ

上記の例は「ローボール・テクニック」をコピーライティングに応用する場合を想定している。

読者に行動を起こしてもらうためにメリットや魅力を先にアピールし、デメリットや注意点などは記事の後半か注釈などで伝える方法である。

ただし本テクニックは読者に不信感を抱かせてしまう可能性もあるため、長期的に集客をしたい場合のコピーライティングとしては適さないだろう。

まとめ

この記事では「コミットメントと一貫性の原理」について、概要・心理的アプローチ方法・コピーライティングに応用する方法について解説してきた。

読者に意思決定や行動を起こさせたいときには「コミットメントと一貫性の原理」を応用したコピーライティングをすることが有効であることがお分かりいただけただろうか。

ただし何事にも例外があるように、全ての人間が一貫性を保つように行動するわけではない事を頭に入れておく必要がある。

とはいえ人間の心理を理解することはコピーライティングをする上で最も重要であるため、ポイントを理解して積極的に活用していくことをお勧めする。