コピーライターとして顧客の心をつかむための「QUESTの法則」

QUESTの法則。それはコピーライティングを行う基本原則のようなものとして捉えると良いだろう。QUESTの法則を参考にコピーを考えたり、文章を作成することによって、ユーザーの好奇心をくすぐらせたり、届けたいものに対して違和感を感じさせない工夫を凝らすことができるようになるだろう。

QUESTの法則は頭文字から以下のような考えを、ライターに意識させるようにしている。

  • Qualify:「ターゲットを絞り込む」
  • Understand:「相手の気持ちを理解・共感する」
  • Educate:「解決方法を教育する」
  • Stimulate:「購買意欲を刺激する」
  • Transition:「顧客に変化させる」

それぞれの項目について、ライターが意識するべきことはなにかを、さらに深く考えていくことにしよう。

Qualify「ターゲットを絞り込む」

「ターゲットを絞り込む」とはつまり、あなたがコピーライティングを行うにあたって、その内容をどのような人に届けるのかを設定する、ということでもある。だが、ターゲットはどのように絞り込めば良いのだろうか。

今の時代には、ソーシャルメディアなどを通じて広告を発行する際に、ターゲットを絞り込むことができるのをご存知だろうか。ソーシャルメディアがなぜそのようなことができるのかというと、開発者によってメディアの利用者の個人情報をデータとして、豊富に管理できているからである。

例えば、ファンションに関する情報を求めている人の年齢層であったり、性別、個人で興味のあるものなど、使用履歴を把握できているため、コンテンツ発信者にとって有利な情報発信を行える環境が整えられているのである。

フェイスブックやグーグル、アマゾンといった企業がなぜあそこまで広告ビジネスに有利なのかというと、顧客情報を大量につかむことができているからなのである。

その大量に集められている顧客情報を分析し、広告を発信したい人に合わせて、ターゲットを絞りやすくすることは、どれだけ顧客情報を集めているかによって、効果が変わることだろう。

では、顧客情報をコピーライターとして集めるためには、どのようなことができるだろうか。

それは意外にもシンプルなことで、常日頃から街に出かけて、過ぎ去る人たちの行動を観察したり、食事その際にはどんな会話をしているのか、などを気にしておくことで、年齢層の違いによって生まれる「求められていること」に気づけるようになっていく。

または、いろんな年齢層の人たちと、会話する時間を増やしていくことも、大きな収穫があるはずだ。年齢層の違いは価値観の違いを生むと同時に、「求められていること」にも大きさ違いがあることに気づけるようになるだろう。

その「違い」に気づけるようになるだけでも、コピーライターとしての素質を鍛える時間にすることができるはずである。

Understand「相手の気持ちを理解・共感する」

「相手の気持ちを理解・共感する」というのは、実際のところ誰にでもできる簡単なことである。相手が嫌だと思うことはやらないでおく。反対に喜びそうなことを考えて、行動に移す。もしくは相手が努力していることや、感じていることに対して、共感を示すこと。それはコピーライティングを行う際には、非常に重要な要素として考えておく必要がある。

相手の気持ちに理解をしていていたり、共感していることを相手に伝えることができれば、相手もこちらのはなしを信用してもらえるようにもなるだろう。だが、近年考えられてきた理解や共感というものは、「いいね」とか「シェア」というボタンで示すことのできるものであるという誤解が生じているようにも感じている。

誤解があってはいけないので話しておくと、最近でいうところの「いいね」や「シェア」の数は、理解や共感を示すものではなくなりつつあり、実際には「おもしろい」とか「役に立つ」ということを示していたりもするものである。

「おもしろい」も「役に立つ」も、考えようによれば「共感する」と同じ意味を持つのかもしれない。

だが、現代人にとっての「おもしろい」や「役に立つ」は自分にとってのという意味が込められいることも多い。

そのためソーシャルメディア内の情報の全てが、自分にとって役に立つのかというと、そういうわけでは決してなく、ネット社会で発せられている情報の多くは、自分が「おもしろい」とか「役に立つ」という自分目線の情報ばかりが集まっていて、相手にとっての「おもしろい」や「役に立つ」ようなことは少なくなってしまっている。

あなたの顧客が求めているものは何かを考える上で、ボタンをクリックするだけの理解や共感まがいのもので終わらず、直接的なリアクションを与えるような、本当の意味での理解や共感を示すことについて、考えておく必要があるだろう。

Educate:「解決方法を教育する」

「解決方法を教育する」。つまり、ユーザーの問題をあぶり出し、その問題解決に向けた方法を、個人的に、もしくは複数人で学べるようなコンテンツを届けるようにする、と考えておくと良いだろう。

実際に行われていることで言うと、無料コンテンツの中に、あらゆる問題解決に対するヒントを発信したり、有料コンテンツとして、直接問題解決のための相談に乗ると言うことを行なっている人もいるだろう。

最終的には、ひとりひとりが自分の問題を、解決することができる能力を身につけていくことが重要になるのだが、短期的に達成できるものでもなく、その目標を達成させるには、長期的な計画を持って挑む必要があり、そのモチベーションを保つためにも、ライターとして、もしくはコンテンツの発信者として、情報を提供する機会を増やしていく。

それが、「解決方法を教育する」というふうに考えている。

ユーザーは自分の問題を解決できたことに自信を持てるようになれば、今度はこちらが困っている際などにも、手助けをしてくれるようにもなる。それは信頼関係によって成り立つものであり、そのような相互関係を増やしていくことができれば、事項から解説していく、「購買意欲を刺激する」や「顧客に変化させる」といったことを行う際にも、効果的な印象を与えやすくすることも可能になるだろう。

Stimulate:「購買意欲を刺激する」

「購買意欲を刺激する」というのは、ときに攻撃的な印象を与える奇抜なものであったりもする。例えば、不安を煽るような表現を用いて、コンテンツをアピールすることにつなげていったり、誘導尋問的にアンケートなどを通じて、自分が届けたいものの必要性を知らせる。

そういうことをユーザーが意識的に行うように、悪く言えば「仕向ける」ということになるだろう。

だが、全ての「購買意欲を刺激する」ための行為が、そのようなことにあたるわけではない。

ユーザーの考えていることを理解した上で、「煽る」とか「仕向ける」ということをせずに、やさしく、そして端的に必要なことを返答するということだけでも、実は困っている人からすれば、納得のいく回答を与えられたと思うものでもある。

服を探しにいっている女性は、実は自分が欲しいものを知っていて、お店に足を運び、気に入った服をいくつも試着室に持っていくだろう。連れ添いの人がいれば、必ずといって良いほど、自分の新しい服を着ている見た目について、どう思うかを聞いてみたりもする。

それは「この服を買う」ということは既に決まっていて、それ以外の服を色々と着て試している時間を、楽しみたいという想いが込められてもいたりする。

つまり、そういう試している時間も含めての買い物でもあるため、よりその時間を堪能できた方が、お客様としては購買意欲をそそらせることに、つながる可能性を高めていく。そんなことをお店の店員は考える必要もあるのである。

Transition:「顧客に変化させる」

「顧客に変化させる」ということについて、分かりやすく伝えるためにも、先ほどの服を買いに来ている女性を使って、はなしを進めていくことにしよう。

服を何枚も試着している女性からすれば、自分がどんなふうに変化しているのかが気になってしょうがない。だから、付き添いの人に、自分がどう変化しているのかを尋ねることだろう。

そして、気の合う店員がいれば、その人も交えて、自分がどう変化しているのか、もしくは「もっと可愛く」とか「もっと綺麗に」見えるスタイルについて、悩むことだろう。女性は特にそういう、何気ないことに悩む時間が好きなものだ。

そんな時にこそ、お店の店員はさまざまなアイディアを与え、より良く、そしてお客様にとって最善な変化を与えられるような提案を行える技術や知識を身につけておかなくてはならない。

ファッション店員を例にして、解説したが、これはコピーライターに関しても同様に、自分が伝えようとするコンテンツに対し、いかにお客様目線で説明することができるか。

このコンテンツを手にすることで、どのような変化を受け取ることができるか、ということをやさしく、そして納得のいく形で印象付けるのが、コピーライターの役割でもある。

まとめ

QUESTの法則について5つの項目について、例を交えながらはなしを進めてきたが、これらの内容を知っているだけでは、なにも役には立たない。

QUESTの法則は、使い続けることでようやく効果を発揮するようになる。

とはいえ、こどもの野球の素振り練習のように、何百回と繰り返したからといって、コピーライティングが上手くなるというわけでもない。

自分のコピーライティング力を高めていくには、練習だけではなくて、本番を実際に経験していくことでしか身につかないこともあるわけで、練習というのはやりやすい形を作っていくことには役に立つが、仕事として考えたときには、やはり多くの本番による経験を増やしていくことができなければ、QUESTの法則を体に染み込ませることは、なかなかできないだろう。

今回のはなしを参考にしてもらい、あなたのコピーライティング技術を、どうかできれば実践的に活用してもらえる機会が増えることを願っている。