【書評】『「言葉にできる」は武器になる。』言葉を武器にして何ができるのか?

『「言葉にできる」は武器になる。』を読み始めて、最初に頭に浮かんだフレーズがあった。

“どう書くかより何を書くかが重要だ” である。

これは、ライター/作家の上阪徹氏の著書に出てくるフレーズだ。

“「どう書くか」より「何を書くか」が、はるかに重要です。大切なのは、文章の「表現」ではなく、文章の「中身」だということです。”

(『10倍速く書ける超スピード文章術(著者:上阪徹)』P43より引用)

『「言葉にできる」は武器になる。』の中にも同じ意味のフレーズが出てくる。

“「相手が聞きたいのは意見であって、言葉そのものでなない」”

(『「言葉にできる」は武器になる。』 P26より引用)

この2つは「書くこと」と「話すこと」の違いはあるが、両方ともコミュニケーションとして、最も重要ことは「表現」ではなく「意見(メッセージ)」だということを主張している。

本書は、自分の「意見」を磨き上げて、その意見を「言葉」にするトレーニング方法を詳細に解説した本である。

したがって、次のような方に読んでいただきたい。

  • 自分の意見を言葉にできない方
  • 人をもっと惹きつける文章を書きたいと思っている方
  • 文章を書く仕事・マーケティングを行う仕事についている方

1.「言葉にできる」を武器にするためのフェースⅠ 意見・思いの作り方 

『「言葉にできる」は武器になる。』とは、「言いたいことが言葉にできれば、人を動かすことができる」ということだと、著者の梅田悟司氏は述べている。

ここでのポイントは

  • 言いたいことを言葉にして、「理解させる」だけで言葉は武器にならない
  • 「人を動かして」こそ、言葉は武器になる

ということだ。

例えば、セールスプロモーションに置き換えると、ターゲットに製品のベネフィット(ターゲットにとっての利益)をうまく伝えることができれば、ターゲットは製品を買うということである。

つまり、ターゲットが「いい製品だ」と理解しても、買う行動にならないと、伝えた言葉は「武器」になっていないわけだ。

次の段階で、「人を動かす」ための「言葉の作り」に入っていく。

1-1.「内なる言葉」に気づくことで「意見・思い」ができる?

 本書には「内の言葉」と「外に向かう言葉」というキーワードが出てくる。

それぞれのキーワードの意味は、次のとおり。

内なる言葉

  • 物事を考えたり、感じたりする時に、無意識に頭の中で発している言葉

外に向かう言葉

  • 生活の中で普段から使っている言葉
  • 自分の意見や思いを言葉という形にしたもの

この「内なる言葉」を「外に向かう言葉」に変換させることによって、言いたいことを言葉にできると著者は主張している。

つまり、次のとおりになる。 

  • 内なる言葉=言いたいこと(=意見、思い)
  • 外に向かう言葉=言いたいことを言葉にしたもの

前述のとおり、重要なことは「表現」ではなく「意見(メッセージ)」である。

したがって、どれだけ表現が上手であっても、中身のない意見に他人は賛同しないということだ。

そこで筆者は、「内なる言葉」を磨いて、人を動かすことができる「意見や思い」を作ることを勧めている。

1-2.「意見・思い」を作るためには、頭にあることをすべて書き出すこと

 本書の特長は、人を動かすことができる「意見・思い」を作るために「内なる言葉」に幅や深みを持たせるトレーニング方法を具体的に説明していることである。

「内なる言葉」と向き合うとは「自分の視点と向き合うこと」

この「自分の視点に向き合う」ためには、頭の中から頭にある言葉をすべて外に出すことが重要だと述べている。

その方法が次の「7つのプロセス」である。 

7つの思考プロセス

①頭にあることを書き出す

 単語でも、箇条書きでも文章でも良いので、頭にあることをすべてアウトプットする

②「T字型思考法」で考えを進める

「なぜ?」「本当に?」「それで?」と自問して、思考を広げる・深める

③同じ仲間を分類する

 似た内容が書かれた文(紙)をグループにまとめる

④足りない箇所に気付き、埋める

 文(紙)を眺めながら、足りない考え・情報を埋める

⑤時間を置いて、きちんと寝かせる

 時間をあけて見直すことで、より客観的に取り組める

⑥真逆を考える

 常識や自分の先入観から抜け出すために、あえて真逆に考えてみる

⑦違う人の視点から考える

 自分以外の他人(家族、友人、同僚など)がどう考えるかという視点で考える

「7つの思考プロセス」で基本となるのは「①頭にあることを書き出すこと」である。

本書では「書き出し」についてA4サイズの紙を使って単語でも、箇条書きでも、文章でも、頭に浮かんだすべてのことを書き留めることを勧めている。

頭にあることをA4サイズの紙に書き出すには、次の3つのメリットがある。

  • 自分の頭の中を俯瞰して、見られるようになる
  • リズムよく、次々と書ける
  • 文字が大きく書ける

頭にあった「内なる言葉」をすべてアウトプットし、それを書き出した後に①~⑦のように「つなぎあわせる」「分類する」「広げる」「深める」などして、意見としてまとめていくわけだ。

(筆者の私見ではあるが)このプロセスは、本当にハードな頭のトレーニングである。

あるいは一人でやるワークショップと言ってもいいかもしれない。

著者はこの「7つのプロセス」を習慣化することによって、「人を動かす」ことのできる「意見」を作るように勧めている。

2.「言葉にできる」を武器にするためのフェースⅡ 思いをさらけ出す方法 

ここから先は、作り上げてきた「言いたいこと=意見・思い」を言葉にしていく段階に入っていく。

ここでの課題は「言葉にするには思いをどれだけさらけ出すか?」ということだ。

2-1.思いをさらけ出す2つの戦力 「型」

思いをさらけ出すために本書では、「型」と「心構え」という2つの戦略を挙げている。

「型」とは言葉の表現上のスタイルのことで、著者は中学生までに習った方法を使うように勧めている。

本書では5つの「型」を挙げているが、そのうちの一つである「たとえる〈比喩・擬人〉」の例を抜き出した。

“私もあなたの作品の一つです。 森田一義”

“タモリさんでお馴染みの森田一義氏が青年時代からお世話になった漫画家、赤塚不二夫氏の葬儀で述べた言葉は有名であろう。「私はあなたに育てられました」というところを「作品」という比喩を用いることで赤塚氏に対する感謝と愛情が感じられるようになっている。”

(『「言葉にできる」は武器になる。』 P163より引用)

この比喩=言葉には、タモリ氏の人柄がよく出ている。

そして、タモリ氏と赤塚氏の関係をこれだけ短い言葉で端的に表現できている。

心に響く言葉の「形」としては、分かりやすい例だ。

2-2.思いをさらけ出す2つの戦力 「心構え」

思いをさらけ出すためもう一つの戦略である「心構え」とは、筆者である梅田悟司氏がコピーライターとして「言葉のプロが実践する、もう1歩先」と題して、梅田氏が実践していることを挙げたものである。

「心構え」からも一つ、「たった1人に伝わればいい」という事例を取り上げた。

これは、筆者での梅田氏の書いたキャッチコピーである。

あなたに伝えたいことがある。「世界は誰かの仕事でできている」

日本コカ・コーラ株式会社 ジョージア

(『「言葉にできる」は武器になる。』 P212より引用)

Webライティングの経験者や広告を制作したことのある方なら分るだろう。

メッセージを送ろうとする相手を「決め込む」ということ。

そうすることによって、メッセージや広告のクオリティーが相手に刺さりやすくなるわけである。

しかも、「あなた」以外の多くの人にも刺さるであろう。

2つの事例で思いをさらけ出す2つの戦力の概要を紹介した。

思いをさらけ出す2つの戦力の「型」と「心構え」は、この章だけを読んでいただいても勉強となる内容だ。

3.最後に

本書は、自分の「意見・思い」をどうすれば「言葉」にして「伝える」ことができるか、人を動かすことができるかのノウハウをまとめた本である。

「内なる言葉」を磨き、人を動かすことができる「意見・思い」を作るための「7つのプロセス」は、かなりハードな頭のトレーニングだ。

そのため、実際に取り組んでみないことには効果を実感することはできない。

人を動かす「意見・思い」をつくために、ぜひとも休みの日の午前中にA4のコピー用紙をたくさん用意して、ダイニングテーブルを占領して、実際に「7つのプロセス」に取り組んでいただきたい。

もちろん、『「言葉にできる」は武器になる。』をテーブル上に広げることもお忘れなく。