コピーライティングを学ぶことは、コピーライターだけでなく、全ての人にとって有益である。
なぜなら、コピーライティングの技術は、人を魅了するスピーチの仕方や成果を高めるビジネスレターの書き方など、あらゆる分野のテクニックを凝縮したものだからだ。
人を惹きつける話し方でプレゼンを成功させたい
商談で自社サービスの魅力を余すところなく伝えたい
LPやブログのコンバージョン率を飛躍的に改善したい
この記事は、上記のような願望や悩みを持つ全ての人を問題解決に導くために書かれている。
特に、今回紹介する「クライマックス法」と「アンチクライマックス法」は、汎用性の高いメソッドだ。
読んですぐ使えるシンプルな方法論にも関わらず、適切に使い分ければ、その効果は絶大である。
- どのように使い分けたら最も効果的か?
- コピーライティングにどう活かしたら良いか?
上記の点については、具体例も交えて解説していく。
ぜひ、ご自身のケースに活用して、成果のほどを実感してほしい。
「クライマックス法」と「アンチクライマックス法」は、1942年に心理学者ハロルド・スポンバーグによって提唱された理論だ。
そもそもは、心理学の研究成果をスピーチに応用したメソッドである。
端的にいうと、
- 「クライマックス法」…「最後」に結論を提示する表現方法
- 「アンチクライマックス法」…「最初」に結論を提示する表現方法
ということになる。
クライマックスとは「緊張や興奮が最も高まった状態」を意味する。
映画やドラマの「クライマックスシーン」という言葉をイメージすると分かりやすいだろう。
つまり、「クライマックス法」とは、徐々に話しを盛り上げ、最後に最も大事なことを主張する修辞法だ。
一方、「アンチクライマックス法」とは、先に結論を明示してしまい、後から順を追って説明していく修辞法である。
以下、それぞれのメソッドの特徴を掘り下げていこう。
「クライマックス法」の特徴は、十分な時間をかけて期待感を高めていき、相手の興味を「最後まで」惹きつける点にある。
一般的な小説や話芸(お笑い)の表現スタイルがまさにその好例だ。
カタルシスやオチを期待して、読者や観客は終始釘づけになるのである。
クライマックス法は、漢詩の基本型である「起・承・転・結」にも通ずる表現形式といえよう。
起…導入
承…発展
転…変化
結…結論
クライマックス法は、日本人に馴染み深い表現方法である。
日本語には、元来、筋道立てて話しを展開し、最後に結論を持ってくる傾向があるからだ。
クライマックス法は、ある種奥ゆかしい修辞法といえる。
「アンチクライマックス法」は、最初に結論を提示することで、相手の興味を「一気に」惹きつけるのが特徴だ。
この点がクライマックス法との大きな違いである。
アンチクライマックス法の表現形式は、プレゼンの常套手段である「PREP(プレップ)法」のフレームワークと共通している。
P…Point(要点)
R…Reason(理由)
E…Example(実例)
P…Point(要点)
アンチクライマックス法は、英語の論理構造に馴染み深い表現方法だ。
結論ファーストが求められるビジネスの世界でも重宝される傾向にある。
アンチクライマックス法は、いわゆる単刀直入な物言いといえよう。
次に、「クライマックス法」は、どのような場面や状況で使用すると効果的か見ていこう。
クライマックス法が効果を発揮するのは、以下のようなケースだ。
- 好意的な人が相手
- すでに信頼関係がある
- 結論がインパクトに欠ける
- 感情を重視する人が相手
話しをする、あるいはメッセージを届ける相手が、こちらに興味関心を持っている場合は、クライマックス法が効果的である。
人間の集中力には限界があるが、好意的な相手や信頼関係がある相手なら、最後まで飽きずに付き合ってくれるだろう。
結論がインパクトに欠けるケースにおいても、クライマックス法が効果を発揮する。
優れたお笑い芸人が、特にオチのない話を面白おかしくフリートークできるのは、クライマックス法を巧みに使いこなしているからだ。
感情重視の人は、結論(論理)でなはなく、ストーリーに惹かれる傾向がある。
そのため、感情派タイプの相手(女性に多い)に情報を届ける場合にも、クライマックス法が有効だ。
クライマックス法が、ストーリーテリングの修辞法といわれる所以である。
続いては、「アンチクライマックス法」を選択すべき場面や状況を確認していこう。
アンチクライマックス法を使用すると効果的なのは、以下のようなケースだ。
- 興味のない人が相手
- 面識や信頼関係がない
- 忙しい人が相手
- 論理を重視する人が相手
興味関心がない、あるいは面識がない相手に主張する場合は、アンチクライマックス法が効果的だ。
同じく、信頼関係が構築されてないケースでも、冗長な話し方や文章で相手を不快にさせないよう、結論を先に示すべきである。
ビジネスシーンなど、時間が重視される場面でも、結論ありきのアンチクライマックス法が歓迎される傾向にある。
ただし、取り引き実績や信頼関係がある相手なら、クライマックス法でじっくりと商談を進めても良いだろう。
論理を重視するタイプの相手(男性に多い)に主張するケースにおいても、アンチクライマックス法が効果を発揮する。
論理重視の人は、過程はさておき、まずは結論を提示してほしいのだ。
効率や合理性を重視すべき場面では、アンチクライマックス法を選択すべきである。
尚、以上のようなケーススタディは、あくまでも原則にすぎない。
世の中には、論理的な女性や感情的な男性もいるし、忙しいがゆっくり話しを聞きたいなど様々なタイプの人がいる。
特に自社の商品やサービスをアピールする際には、ターゲット層の特徴をしっかり見極めて、クライマックス法とアンチクライマックス法、どちらがより効果的か判断すべきだ。
上記のような考察を踏まえて、クライマックス法とアンチクライマックス法を「効果的に使い分ける」ポイントをまとめておこう。
クライマックス法が向いているジャンル
「クライマックス法」が向いているのは、以下のようなジャンルだ。
- スピーチ
- 日常会話
- エンターテイメント
- SNS
- 商談(※信頼関係がある相手)
パーティやちょっとした会合でスピーチする、そんな時にはクライマックス法が最適だ。
デートや日常の場で、楽しい会話を交わし、相手との関係性を深めたい場合にも、クライマックス法を活用すると良いだろう。
小説や映画、お笑いといったエンターテイメント界でも、クライマックス法が一役買っている。
ファンや観客が相手なら、時間をかけてストーリーを展開していくクライマックス法こそが、最大限のワクワク感を生み出すスキームとなるのだ。
主にフォロワーを相手にするSNSでも、クライマックス法による情報発信が効果的である。
ビシネスシーンでは、アンチクライマックス法が基本だが、気がおけない相手であれば、あえてクライマックス法を選択し、腰を据えて交渉を進めても良いだろう。
「アンチクライマックス法」が向いているのは、以下のようなジャンルである。
- コピーライティング
- ビジネス全般
- プレゼンテーション
- ブログ
- LP
コピーライティングの場合は、商品やサービスにまだ興味関心のない相手が前提となるため、アンチクライマックス法が向いている。
だだし、これはあくまでも原則にすぎない。詳しくは、後述することにしよう。
ビシネスシーンでは、原則としてアンチクライマックス法を選択しておくと良い。
社内のやり取りや社外へのプレゼンなど、あらゆる場面において、結論ファーストで端的なアンチクライマックス法が有効だ。
ブログやLPでも、アンチクライマックス法を用いると、最大限の成果が期待できる。
自社ページにはじめて訪れたユーザーは、必ずしも好意的とはいえない。
そのページに求める結論(ベネフィットや潜在ニーズ)がなければ、すぐに離脱してしまうだろう。
アンチクライマックス法で、最初にズバッと結論を明示し、その後クロージングに向けた説得を進めるのが鉄則である。
上記の通り、「コピーライティング」には「アンチクライマックス法」が有効というのが通説となっている。
繰り返すが、アンチクライマックス法の特徴は以下の通りだ。
- 相手の興味を一気に惹きつけることができる
- 関心や信頼関係がない相手にも有効
- 忙しい人にも訴求効果がある
これらの特徴から、アンチクライマックス法は、コピーライティングに打ってつけのメソッドといえよう。
LPや広告に掲載されたキャッチコピーを目にするユーザーは、多くの場合、自社の商品やサービスに「興味」や「信頼」がなく、さらに長々と閲覧・視聴している「時間」もない。
まさに、アンチクライマックス法が本領を発揮すべき場面である。
尚、自社の優良顧客に向けて情報発信する場合には、あえてクライマックス法を用いても良いだろう。
信頼関係が構築されている相手に対しては、単刀直入な物言いよりも、奥ゆかしい修辞法が最適なケースもあり得るからだ。
上記のような例外はあるが、コピーライターを目指す人やコピーライティングを学びたい人は、まず「アンチクライマックス法」を意識したキャッチコピーを書いてみると得るものがあるだろう。
論より証拠。
続いては、「クライマックス法」や「アンチクライマックス法」をキャッチコピーに活用した事例を紹介しておこう。
以下、タイプの違う2つのコピーを例に挙げる。
【コピー1】
吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。
『ダイソン株式会社 / TVCM(※YouTube参考動画)・広告で使用されたキャッチコピー』
上記は、家電メーカー「Dyson(ダイソン)」の日本デビューの際に採用され、同メーカーを一躍有名にしたキャッチコピーである。
おそらく、見覚え、聞き覚えのない人はいないだろう。
このコピーは「アンチクライマックス法」の効果を巧みに利用している。
が、気づいただろうか?
Dysonの最大のセールスポイントは、主力の掃除機でいえば「吸引力が変わらない」ことだ。
その最も大事な訴求ポイント(結論)をまず提示して、しかもそれは「ただひとつ」である(特許技術だから真似できない)ことを後づけで説明している。
このキャッチコピーのセンセーショナルなインパクトがなかったら、Dysonの認知度や人気は大きく違っていただろう。
少なくとも、今より売り上げが伸び悩んでいたはずだ。
まさに、アンチクライマックス法の効果たるや絶大である。
【コピー2】
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
『※株式会社ファーストリテイリング公式サイトより引用 / 企業コピー』
上記は、UNIQLO(ファーストリテイリング)の企業コピーだ。
ちなみに、企業コピー(ブランドタグ)とは、個別の商品やサービスではなく、企業自体を宣伝し、ブランドイメージを構築するためのキャッチコピーである。
企業コピーでは、長く愛されるキャッチコピーが採用される傾向にある。
そのため、目先のインパクト狙いではなく、じんわりと主張が伝わる「クライマックス法」で表現されたキャッチコピーが意外と多い。
その顕著な例がこのコピーだ。
UNIQLOの服は、ワンシーズンだけの流行を追うファストファッションではなく、「生活スタイルや常識、さらに世界のあり方までも変える」というのが主張だが、クライマックス法により、その要点が実に巧く表現されている。
読後に静かな感動すら覚える、ひじょうに素晴らしいコピーである。
コピーライターを目指すなら、クライマックス法を意図的かつ効果的に使用したコピーライティングにも挑戦してみると良いだろう。
今回は、あなたが今から書くキャッチコピーの質を劇的に変え得る「2つのメソッド」について、詳しく解説してきた。
かいつまんで、ポイントをまとめておこう。
【クライマックス法】
「クライマックス法」は、結論が最後。
相手の興味を「最後まで」惹きつける。
- 好意的
- 信頼関係がある
- 感情重視
以上のような相手や結論にインパクトがない場合に有効で、「スピーチ」「会話」「エンタメ」「SNS」「商談」に効果的。
じっくりとメッセージを伝えたいなら、クライマックス法でコピーを書くべき。
【アンチクライマックス法】
「アンチクライマックス法」は、結論ファースト。
相手の興味を「一気に」惹きつける。
- 興味がない
- 信頼関係がない
- 時間がない
- 論理重視
以上のような相手に有効で、「コピー」「ビジネス全般」「ブログ」「LP」において効果を発揮する。
インパクト重視で情報発信したいなら、アンチクライマックス法でコピーを書くべき。
要点は以上である。
企業のオウンドメディアや個人、SNSなどによる広告活動が加速化している現在、自社サービスや自身の魅力を十二分に伝えるための「方法論」は益々重要性を増している。
その最たるものが「コピーライティング」のメソッドといえよう。
この広告全盛の時代に、自身の可能性を最大化し、より良い未来を描こうとする人は、すべからく「優れたコピーライター」であるべきだ。
今回紹介した情報なども参考にしつつ、ぜひ、あなたにしか書けない素敵なコピーで世の中を楽しく、豊かにしてほしい。