Contents
「DESC法」とは、下記の言葉の頭文字からつけられた名称である。
「Describe:描写する」
「Explain:説明する」
「Suggest/Specify:提案する」
「Choose:選択する」
これらの言葉からもある程度イメージできるかもしれないが、「DESC法」は基本的に「穏やかな問題解決を目指すコミュニケーション方法」である。
PREP法やSDS法といった「文章構成」のための型とは少し異なり、どちらかというと「会話や対話のテクニック」の一つとして紹介されることが多い。
例えば、ある課題の改善策について相手と話し合う場面でよく使われ、こちらの提案を円満に受け入れてもらいやすいということがすでに証明されている。
そのため、DESC法はビジネスシーンに限らず、日常生活のさまざまな場面でもよく使われている。
構成は「起承転結」に似ている。まずは、これから問題解決しようとしているテーマや状況について、客観的事実などを一つずつ述べていく。起承転結の「転」にあたる部分で、具体的な対策を「提案」する。そして、ラストの「結論」で締める。このイメージがあればひとまずは大丈夫である。
DESC法の具体的な構造や作り方はのちほど紹介するが、まずはこのイメージで読み進めていってほしい。
その「コミュニケーション方法」を、わざわざコピーライティングで活かそうと考えたのはなぜか。それは、異なるアイディアや考え方を取り入れながらコピーライティングを作ることにより、表現の幅がぐんと広がるからである。
特にDESC法は、表現の柔らかさに特徴がある。強い主張よりも「語りかける」といったコミュニケーションのニュアンスや言葉選びを学びたい人は積極的に取り入れ、コピーライティングで実践・活用してほしい。
DESC法は、 PREP法やSDS法とともに紹介されることが多い文章の「型」である。だがこの3種類の型は、使われる場面やメリット、構成要素などが異なる。
- DESC法:双方にとって円満な問題解決を目指す。描写・説明・提案・結論で構成される。
- PREP法:論理的な説明力が高く、主張・結論重視。結論・理由・事例・結論で構成される。
- SDS法:「結論が最初」の文章ではほぼ万能に近い。概要・詳細・概要で構成される。
DESC法は、客観的事実・主観的な感情・提案(主張)・結論という順番に述べる。話の「主張」を「提案」という言葉で表現している通り、お互いにとって穏やかな解決を目指す。
例えば、「頼みにくいことを依頼するとき(または断るとき)」「自分の要望をうまく伝え、相手からの承認を得る」「話し合いによって円満な問題解決を目的とするミーティング」などの場面で、特に効果的である。
DESC法は、強く自己主張するためというよりは「自分と相手の間でうまく折り合いをつける」といった状況に最適なのである。
それ以外の、PREP法、SDS法についても概要を紹介しよう。
PREP法は基本的に、相手がこちらの主張(結論)を理解するために理由や事例を述べるという、きわめてシンプルな構成である。構成の中に「主観的な感情」を含まない。「双方のコミュニケーション」ではなく、こちらの「主張」のための型であるため、基本的には一方だけが発言するタイプのプレゼンテーションや提案書に用いる。
SDS法は、最初と最後に「要点」を繰り返すという構成で、PREP法と似た構成である。だが、PREP法が明確に「理由」「事例」で構成すると決まっているのに対し、SDS法は「詳細」という表現になっている。表現内容に幅があるため、日常生活でもよく用いられる。
「DESC法」が得意としているコミュニケーションは、「穏やかな問題解決」や「円満な依頼・承認」である。一つずつ客観的事実を順番に述べていくことによって、その後に伝える「提案」に納得してもらいやすくする。そのため、「問題解決型のコピーライティング」のとてもよい教材になるだろう。
例えば「いつもPCの容量がいっぱい。その悩みをなくしませんか?」「朝のお弁当、もうすこし時間を減らせたらいいですよね」など、そっと消費者に寄り添って悩みを解決するタイプのコピーライティングを学びたい人は、ぜひDESC法を参考にしてみてほしい。
ここで、DESC法の例文を見てみよう。
待ち合わせの予定に毎回連絡もなく遅刻してくる友人に、穏やかに問題解決を提案するという場合である。言いにくいことを注意し、波風立てずに解決するという場面が、DESC法の例文にはとても多い。
D「30分遅刻だったけど、なにかあった?」
E「連絡がないと心配だし、次の予定にも響くから困る」
S「遅れるなら、そういった時点で何分遅れるか連絡が欲しいな」
C「それなら時間が潰せるし、後ろの予定もずらせるから」
DESCはこのように、客観的な事実→主観的な気持ち→提案→結論(改善策)という順番に進んでいく。
DESC法は、「相手が理解するプロセスに沿って、話を進める」ことが前提にある。こういった「ながれ」をコピーライティングや長文作成に活かしたいと考えている人、ニュアンスの柔らかな言葉を選べるようになりたいという人にとっては、たくさんのヒントがあるだろう。
DESC法は、自分の意見を強く主張すべき場面にはあまり向いていない。
あくまでも自分と相手の「落としどころ」をうまく見つけ、お互いが円満に納得しながら今後具体策に取り組んでいくながれを作る、そういった目的のコミュニケーション方法なのである。そのため、プレゼンテーションの場において「短時間で自分の主張やアイディアを強く印象づける!」といった場合は、PREP法を使ったほうが効果的だ。
また、そこまで強い説得力を求められていなければSDS法もいいだろう。
同様に、結論のみを伝え、ダイナミックさを重視したコピーライティングとはあまり相性がよくない。「あなたの肌も絶対に変わる!!」「観るしかない!!今年一番の感動作!」といった主張の強い言葉とは、いまいち消費者やニュアンスが合わないことがわかるだろう。
それでは実際に、DESC法を作る4ステップを紹介しよう。「問題解決型」のキャッチコピーやライティングの大きなヒントにもなるだろう。
「DESC法」の言葉は、各ステップの頭文字でできている。4ステップからなり、会話の始まりからラストまでのながれに沿っている。起承転結をイメージすると展開が理解しやすいだろう。
最初に、客観的事実を述べることから始める。これはPREP法と比べるとわかりやすい。結論(主張)が冒頭にくるPREP法の場合、プレゼンテーションのスタートを「オンライン化はマストである」から始めることになるが、DESC法の場合は「オンライン化が普及している」になる。
重要なのは、思い込みや感情といった主観的な要素を入れないことである。
Explainは、最初の「D(Describe)」で説明した客観的事実を受けて、自分の主観的な考えや気持ちを述べる。「オンライン化が普及した(Describe)」→「新しい働き方は積極的に取り入れる必要がある」といった内容である。
基本的にはコミュニケーションが目的のため、主観的な内容と言っても、あくまでも穏やかに伝えることが求められる。
「S」は頭文字も意味も変わらないため、SuggestとSpecifyどちらでも大丈夫である。「提案する」という意味だ。冒頭の「D」で説明した状況(客観的事実)を変えるためには相手に何をしてもらう必要があるか、具体的かつ現実的な「提案」をここで示す。
「相手にしてもらうこと」を述べるとはいえ、DESC法が目指しているのはあくまでも提案である。命令や強制にならないように注意する必要がある。
コピーライティングにおいて、親身になっているニュアンスと現実的な提案を両立させたいと考えている人は、DESC法が近道の一つではないだろうか。
最後に、Choose(選択する、結果を示す)によって選択肢や代替案を示す。
「Suggest、Specify(提案)」に対し、相手が「承認した場合」と「拒否した場合」に対しどう対応するかについて、この4ステップ目で示す。承認と拒否それぞれに対する答えもあらかじめ考えておかなければならない。
DESC法のデメリットは、相手の答えを想定し、このように二種類の選択肢を考えなくてはならないという「手間」がかかる点だ。
円滑で穏やかな問題解決のために有効なコミュニケーション方法だが、準備に時間がかかることが難点である。
DESC法を構成するときは、最も伝えたい部分である「Suggest、Specify(提案)」から考える。会話や文章といった一連のコミュニケーションを通して「相手に何をしてほしいのか」を明確にし、相手から納得や承認を得るためにはどのような事実を示すことが必要か、という順番に考えていく。
DESC法を作る順番は、あえて挙げるならSuggest、Specify(提案)→Choose(選択する)→Describe(描写)→Express(表現)のながれが多い。
だが、それほど「Suggest、Specify(提案)」以外はあまり気にしなくていいだろう。
ビジネスシーンだけでなく日常会話においても、円満に問題解決したい、場を丸くおさめたいと考えている場面でよく使われるコミュニケーション方法であるDESC法。
文章構成の型とは少し異なる方法を取り入れてコピーライティングを作ってみることは、ぐんとコピーライティングの幅を広げてくれる。強すぎる主張よりも「寄り添うようなニュアンス」「穏やかな問題解決型」のコピーライティングを身につけたいと考えている人は、ぜひ一度学んでみてほしい。かならず表現力に一段と磨きをかけてくれるはずである。