「伝え方が9割」が教える、頼みごとに「イエス!」をもらう技術

シリーズ累計130万部以上、単独本で100万部以上を売り上げている大ベストセラー作、佐々木圭一著の「伝え方が9割」(ダイヤモンド社)を通じて、「ノー」を「イエス」に変えるコピーライティングの技術を学ぼう。

「伝え方が9割」の著者について

今回の記事は、大ベストセラー、佐々木圭一著「伝え方が9割」を取り上げる。著者の佐々木圭一氏は、大手広告代理店の博報堂でコピーライターを勤め、その経験の中で、伝え方には技術があることを発見。

そこから、コピーライターとして頭角を現し、後に書籍「スティーブ・ジョブズ」に出てくる伝説的クリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事した。

米国の広告賞One Show Designで日本人初のゴールド賞を獲得、カンヌ国際クリエイティブアワードにて金賞を含む計6つのライオンを獲得するなど、国内外で合計55のアワードを入賞受賞している。

現在は、株式会社ウゴカスの代表で、日本のコミュニケーション能力をベースアップさせることにライフワークとして取り組んでおり、多数の講演やセミナー、メディア出演などを行っている。

「伝え方が9割」が教える、「ノー」を「イエス!」に変える7つの切り口

コピーライティングは、読者に商品やサービスを言葉で紹介し、それを購買につなげることを基本的な目的にしている場合が多い。しかし、その言葉(コピーライティング)の読者は、初めから買う気満々ということはほぼないだろう。それを購買につなげることが、コピーライターの腕の見せ所なわけだ。

では、コピーライティングは生まれ持った才能なのだろうか?その答えを示してくれるのが、今回紹介する本書「伝え方が9割」だ。

「伝え方が9割」は、ごく単純に言ってしまうと、3000年以上昔の古代ギリシア、アリストテレスの時代から脈々と追究されてきた歴史あるレトリック技法を一般の人(もちろん、コピーライターを志す人)にも非常にわかりやすく説明してくれている本だ。

本書は、相手から「イエス」を引き出す伝え方の技術と、感動を生み出す「強いコトバ」をつくる技術の2つで大きく構成されている。

日本では、レトリックの技術は学校の教科の国語において修辞法としてごく一端を多少学習する程度なので、独立した教科や学問として習得した人は稀だろう。

海外の大学でも学問的には衰退した時代があるが、インターネットによる個人の発信や電子メール、メッセージング、チャットなどテキストでの他者とのコミュニケーションが増加したり、職場や学校でプレゼンテーションを行う機会が多くなったことから、論理や感情、書き手の人柄を伝える技術としてレトリックを学ぶ人が増えているそうだ。

確かに仕事ではライティングやスピーチのスキルが人事的な評価対象となっている企業も多い。

だから、本書「伝え方が9割」が2013年に出版されたとき、日本においても新鮮な知識として受け入れられ、言葉を伝える技術を扱う本として、今もなお読まれ続け、累計100万部を超える大ベストセラーになったのだろう。

しかも、本書の伝え方の技術は、「イエス」を引き出す技術をわずか7つにまとめており、非常にわかりやすい。日本でも屈指の評価を得たコピーライターである佐々木圭一氏の著書でもあり、コピーライターを目指す人なら必読書と言ってもいいだろう。

本書で著者の佐々木圭一氏の主張する、相手の「ノー」を「イエス」に変える要点とは、自分の頭の中の考えをそのままコトバにするのではなく、読み手の考えや思いを想像し、相手のメリットと一致するコトバで伝えることである。

そして、その基本的な考え方から、7つの切り口(手法)を挙げている。

相手から「イエス」を引き出す7つの切り口

  1. 相手の好きなこと
  2. 嫌いなこと回避
  3. 選択の自由
  4. 認められたい欲
  5. あなた限定
  6. チームワーク化
  7. 感謝

上記の7つの切り口を一つひとつ説明することは本記事では省略するが、これらの切り口に関する解説には具体的な文例も交えられており、思わず納得してしまうノウハウが凝縮している。読後に、これを実践すれば、自分でもコピーライティングにおいて、伝え方や言い回しがすぐに上手くなるのではないかと思えてしまうほどだ。

ただ、もしかしたら多くの人は、ビジネスの現場で意識的に、あるいは無意識に、これら7つの手法をすでに使っていたかもしれない。本書の良い点は、これを「7つの切り口」として、ヒットを連発してきた一流のコピーライターによる体系化の試みであるということだ。

だから、これからコピーライターを目指す人にとっても、この7つを意識的に使うだけで、随分と読み手に受け容れられるコピーライティングができるのようになるのではないだろうか。

本書でも繰り返し記されている点を借りるなら、コトバは「思いつく」のではなく「つくる」ことができる、ということを改めて再認識しておこう。

相手のメリットと一致するコトバを「つくる」ことが、コピーライティングの要だと言っていいのだろう。

そして、コピーライティングを学んでいる途上では、7つの切り口をレシピとして、そのレシピどおりに丁寧にコトバをつくることに徹してみてはどうだろうか。レシピどおりに料理できない人が、いきなり一流シェフにはなりえないのと同じで、コトバも決して天賦の才能だけで降りてくるものではなく、技術を使ってつくることができるものなのだと捉えれば、もし今皆さんがコピーライティングに悩みながら取り組んでいるのであれば、強力な武器を手にしたと言えるだろう。

本書の7つの切り口は、単純かもしれないが、だからこそ、誰もが使え、コピーライティングにおいてもすぐに使える武器なのだ。

「伝え方が9割」が教える、感動を生み出す強いコトバをつくる方法

本書のもう一つの大きなメッセージは、「感動的なコトバはつくることができる」だ。佐々木圭一氏は、これを「強いコトバ」をつくる技術と呼び、5つの手法でまとめている。

強いコトバをつくる5つの技術

  1. サプライズ法
  2. ギャップ法
  3. 赤裸裸法
  4. リピート法
  5. クライマックス法

感動を生み出すコトバ、言い回しは、まさにレトリックの世界だ。そして、レトリックは世界中のどの言語においても、人の心を動かす方法として用いられている。佐々木圭一氏は、再び5つの技術としてコンパクトに、しかも一般の読者にとってもわかりやすくまとめている。

これも、コピーライティングを学ぶ人にとっては、とても有益な技術だ。

「伝え方が9割」から学ぶ、コトバの奥深さ

さて、ここだけの話だが…。

本書を何度か斜め読みしたことはあったが、実は本記事を書くまでは、内容をじっくり吟味できるほど読み込んだことがなかった。今回、改めて読んでみて、その単純でわかりやすい、コトバをつくる技術に正直感銘を受けた。

単純でわかりやすいものほど奥深いものであることは多い。おそらく、本書がアドバイスする、相手から「イエス」を引き出す技術、感動を生み出す「強いコトバ」をつくる技術も、シンプルであるが故に、奥が深いのだろう。

佐々木圭一氏が、コトバをつくる技術についてセミナーや講演活動を行ったり、メディアにも幾度も登場していることも裏返せば、コトバをつくることの奥深さを証明しているのではないだろうか。

簡単に使えるが、当たり前のように「使いこなす」には、本書の技術を何度何度も使って、数多くのコピーライティングに挑戦することが、結局は近道なのではないかと思う。

もしかしたら、それが本書のタイトルが「10割」ではなく「9割」である理由で、残りの「1割」にコトバの深淵さを暗示したのかもしれない。