商品やサービスを売るためにはコピーライティングの技術がかかせない。
コピーライティングとは、「人の心理を理解して、文章で人を動かす」テクニックである。
人を動かす文章を書きたくても、そう簡単にできるものではない。
しかし、勉強に時間をかけたくもないし、手っ取り早い手法を知りたくなるものである。
そこで今回はLP(ランディングページ)などのWeb広告で使われる文章術「PASONA(パソナ)の法則」と「新PASONA(パソナ)の法則」を紹介する。
この記事を読み終える頃には、自信を持ってコピーライティングに取り組めるだろう。
PASONAの法則について見ていく前に、人はどのようなときにモノを購入するか考えてみよう。
人の心理を理解しなくては、売れる文章は書けないのである。
購買意欲が掻き立てられる要因の1つに「悩み」や「コンプレックス」がある。
例えばニキビが出来たなど、何か容姿が気になるようになったとき、それを解決するために商品を購入した経験が誰しもあるだろう。
こういった「悩み」に焦点をあて、購入へと誘導する文章テクニックが「PASONAの法則」である。
悩みは日常的に考えていることもあれば、潜在的に無意識に抱えていることもある。
PASONAの法則は読んだ人を駆り立てる効果があり、潜在的な悩みに対してもアプローチして、読んでいるうちに気が付いたら購入していたという状況に落とし込むことができる文章術なのだ。
では、PASONAの法則について見ていこう。
この法則は、日本一のマーケターともいわれる神田昌典氏によって、1999年に提唱された。
汎用性が高く、ランディングページやセールスレターなどのWeb広告を中心に活用されている。
このテクニックを使用することで、これまでに総額100億円の売上効果があったともいわれている。
PASONAは次の言葉の頭文字から構成される。
- P…Problem (問題)
- A…Agitation (扇動)
- So…Solution (解決策)
- N…Narrow down (絞り込み)
- A…Action (行動)
1つずつ見ていこう。
Problem (問題)
読み手が抱えている問題や悩みを明確化する。
(例)ニキビが出来て悩んでいませんか?
Agitation (扇動)
問題点を煽りたて、そのままでは解決されないことを伝える。
(例)ニキビがあると、恥ずかしくて人前に出られません。
Solution (解決策)
問題の解決方法があることを示唆する。
(例)このクリームを塗って一晩寝ると、次の日にはニキビがなくなっています。
Narrow down (絞り込み)
対象となる人や期間を絞り込み、いつでも購入できるものではない限定感を提示する。
(例)先着100名様限定で、商品を半額で購入することができます。
Action (行動)
行動を促すコピーで、購入までのあと一歩を後押しする。
(例)ニキビのないきれいな顔で自信を持って出かけましょう。今すぐ購入を!
このように5つの項目に文章をあてはめていくだけで、読み手を購入へと導く魔法のテンプレートとなっている。
実は紹介したこのPASONA法則は古い型であり、新PASONAの法則が提唱されている。
(旧)PASONAの法則には問題点があり、それは「Agitation(扇動)」の項目についてだ。
PASONAの法則が世に出回るようになってから、このに「扇動」ついて間違った解釈がされるようになり、売るためには必要以上に読み手を煽り立てる必要があると認識されるようになってしまった。
先ほどのニキビの例でも、「ニキビがあることで人前に出られない」とまで言われてしまっては、読む人は気分を害してしまうかもしれない。
そこで、神田氏によって新PASONAの法則が提唱された。
Agitation(扇動)をAffinity(親近感)とし、煽りではなく読み手の悩みに共感して寄り添うように方向転換がなされた。
また、So…Solution(解決策)が次の2つに分けられた。
S…Solution (解決策)
O…Offer (提案)
Solution(解決策)で解決できる証拠を提示した後に、Offer(提案)でより具体的な特徴や特典などで商品をより理解してもらおうというものだ。
この新PASONAは2016年に刊行された『稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式41』の中で神田氏によって公開されている。
相手に共感し信頼関係を構築することで、安心して購入してもらうことにつながるのだ。
では、新PASONAの法則を踏まえて、先ほどの文章を手直ししてみよう。
Problem (問題)
(例)ニキビが出来て悩んでいませんか?
Affinity (親近感)
問題を掘り下げながら相手に共感し、親近感を誘う。
(例)明日が彼との初デートだというのに、これでは印象が悪くなるのではないかと心配になりますね。でも安心してください。良い解決方法があります。
Solution (解決策)
(例)このクリームを塗って一晩寝ると、ニキビがなくなっています。
Offer (提案)
解決策を導入してもらうための具体的な提案をする。
(例)今なら初回限定で、無料お試しサイズをご用意しています。
Narrow down (絞り込み)
(例)さらに、先着100名様限定で商品を半額で購入することができます。
Action (行動)
(例)ニキビのないきれいな顔で自信を持ってデートに出かけましょう。今すぐ購入を!
PASONAの法則は、購入へと誘導する魔法のテンプレートであるが、この効果をさらに高めるには、ペルソナを設定すると効果的である。
ペルソナとは
ペルソナとは、サービス・商品を利用する典型的な顧客像のことで、マーケティング戦略の手法として用いられる。
ペルソナ設定では、年齢・性別・居住地・職業・家族構成・趣味趣向など、パーソナリティについて事細かに定義する。
架空の人物であるが、あたかも実在する1人の顧客として仕立て上げる。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナを設定するメリットは2つある。
▼まず、顧客目線のニーズをより理解することができる。
人物像を詳細に設定することで顧客を深く理解することができ、心に響くアプローチ方法について具体的に戦略を立てていけるだろう。
▼2つ目は、発注者やクライアントとの間で共通の認識を持つことができる。
共通の認識を持つことで、同じ方向に仕事を進めることができ、途中から両者の間で視点がずれることを防いでくれるのだ。
ペルソナの設定方法
架空の人物とはいえ、頭の中のイメージだけで勝手に人物像を作り上げてはいけない。
できるだけ実在する1人のように設定するのかコツである。
その商品のユーザーになりそうな人物として、自分の家族や友人、知り合いが思い浮かぶなら、その人をイメージすると設定しやすい。
身近なところにいないなら、Twitter・Facebook・InstagramなどのSNSで特定の人物を検索する方法もある。
この場合は、イメージに近い人物の投稿をさかのぼって確認し、そのライフスタイルをペルソナとして設定する。
その他にはYahoo!知恵袋などの相談投稿サイトで検索する手法もある。
ペルソナの具体例
では、PASONAの法則で取り上げたニキビに悩む顧客像で、実際にペルソナを設定してみよう。
氏名:澤田綾子
性別:女性
年齢:21歳
職業:大学生
居住地:東京
家族構成:父、母、兄がいるが、現在は1人暮らし
料理、カフェめぐり、ランチが趣味
最近ニキビで悩んでおり、美容関係はInstagramと口コミサイトで情報を収集することが多い。流行りに敏感で、好きなインフルエンサーが愛用しているものが気になる。
コピーライティングで活用しよう
設定した1人の人物に響くように文章を書いていくと、何も考えずに書いたときと比べて、各段に説得力のある内容になる。
上の例では大学生をペルソナに設定したため、若い層に響く文体にしたり、インフルエンサーをイメージキャラクターにしてみることをクライアントに提案することもできる。
ペルソナを設定し発注者やクライアントと共有すると、より効果がでる文章にすることができ、またコピーライターとしての信頼度も上がることだろう。
神田昌典氏はコピーライティングについての良書を刊行しているので、さらに勉強したい場合は購入をおすすめする。
1、禁断のセールスコピーライティング
コピーライティング について分かりやすくまとめられており、神田氏がPASONAの法則をなぜ提唱したのか、その背景も分かる1冊である。
2、稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式
PASONAの法則について、提唱者本人が初めて綴っている。
売れる文章について本質を提示しつつ、細かいテクニックについても学ぶことができる。
3、売れるコピーライティング単語帖 探しているフレーズが必ず見つかる言葉のアイデア2000
衣田 順一 との共著である。具体的なフレーズに迷った際に手元に置いておきたい。
PASONAの法則についていかがだっただろうか。
コピーライターとして駆け出しの頃は、王道の型に沿って書いていくのが効率的で効果を上げやすい。
練習や仕事の中に取り入れ、コピーライティングの技術を高めてもらいたい。