プレゼンテーションで提案したいことが同じでも、使え方次第で聞き手の印象や記憶に残る度合いがことなることがある。
では、どのような伝え方をすれば、相手の記憶に焼きつけることができるのだろうか?
「SUCCESs(サクセス)の法則」は、この記憶に焼きつくメッセージの特徴を6つの要素でまとめたものである。
ここでは、この法則をどのようなフィールドでどのように活用していけば、良いのか?ということを具体的な事例を挙げて説明していく。
「SUCCESs(サクセス)の法則」とは何か?ということを分かりやすく説明している文章が、著書『アイデアのちから』の紹介文の中にあるのでご紹介する。
次のとおりである。
一度聞いたら決して忘れないメッセージ、人を行動に駆り立てるような言葉について、以下の6つの法則を明らかにした。
(1) Simple単純明快である
(2) Unexpected意外性がある
(3) Concrete具体的である
(4) Credible信頼性がある
(5) Emotional感情に訴える
(6) Story物語性
頭文字をつなげてSUCCESs(サクセス)の法則と著者たちは呼ぶ。
この言葉を借りれば「SUCCESs(サクセス)の法則」にかなった「メッセージ」は
「人々の気持ちを動かしたり、記憶に深く刻まれる」をいうことになる。
「SUCCESs(サクセス)の法則」が提唱されて10年以上が経ち、その使われるフィールドも広がり、活用方法も増えてきている。
ネットで「SUCCESs(サクセス)の法則」を検察してみるとヒットの上位に次のようなものが上がってきた。
- プレゼンテーションで成功するための6つの要素 プレゼンテーション
- 6つのポイントでブログ記事の魅力を引き上げる コピーライティング
- 6つのポイントを意識することで、聞き手の興味を引き付ける法則 Webマーケティング
「プレゼンテーション」「コピーライティング」「Webマーケティング」とサイトによっ
て扱っているテーマは異なるが、メッセージ(伝えたいこと)を「SUCCESs(サクセス)の法則」を使って「記憶に焼きつくメッセージ」にする手法を紹介しているサイトが多い。
つまり、伝える方法はプレゼンテーション、コピー、Webコンテンツ、営業トークと様々だが、記憶に焼き付いたり、相手を動かしたりできる「メッセージ」を作るために「SUCCESs(サクセス)の法則」の要素を与えることが必須であると言っているのは、いっしょである。
「メッセージ」は様々なジャンルによってその形を変える。
その中でもコピーライティングが一番、シンプルでかつ凝縮されたスタイルである。
また、本記事を読まれている方たちにも最も身近で分かりやすい事例であると思われる。
そのため、ここでは「SUCCESs(サクセス)の法則」のポイントを使って実際の世の中の
記憶に残るように作られた名作コピーを見ながら、検証していくこととする。
ここで気を付けていただきたいことが一点ある。
コピーライターだけに関わらず、本記事を読まれるすべての方にお願いしたい。
コピーライティングは、その商材やサービスをターゲットに買ってもらうためのメッセージをコピーに創り変えることである。この場合、会社やブランドのイメージアップも含まれる)
したがって、伝えたい「メッセージは同じ」であるが、表現や状況の設定などによって「伝え方が異なる」こととなる。
名作コピーの凄さに感心するのではなく、コピーづくりに「SUCCESs(サクセス)の法則」の要素を入れているかどうか?ということに注目してほしい。
コピーライティングにみる「SUCCESs(サクセス)の法則」に移る。
S:simple 単純明快である
「カラダにピース。」 (カルピス)
聞き親しんだカルピスのキャッチコピーは、人々に爽快な印象を与える。
手軽に買える飲料水の商品群の中でも、シンプルで力強いキャッチコピーとなっている。
細かいことは置いておき、シンプルにすることで、企業のメッセージを誰にでも覚えてもらえるようにしているわけだ。
U:unexpected 意外性がある
「わたしはコレで会社をやめました。」 (マルマン 禁煙パイポ)
このコピーは1984年にオンエアされたたばこの禁煙グッズのCMのセリフだ。
基本的な3段落ちのスタイルである。
ちなみにこのセリフは、3番目のおじさんが小指を出していうことになっていた。
興味のある方はYou tubeを見ることをお勧めする。
[懐かCM] マルマン 禁煙パイポ 「私は、コレで、会社を辞めました」 (1984) – 動画 Dailymotion
ここでいう意外性とは「予定調和」を壊すことである。
人間はドラマにしてもコントにしてもお約束の先にある意外性とのギャップで記憶に刻まれていくのだ。
C:concrete 具体的である
「お、ねだん以上。ニトリ」 (ニトリ)
言わずと知れたニトリのCM。
値段以上、つまり、表記価格を超える価値がある、という具体的なベネフィットを訴求している。CMの最後のサウンドロゴため、親しみやすく、耳に残る。
具体的な事例としては、本来数字を提示することが最も説得力があるのだが、CMやキャッチコピーではセールスプレゼンテーションの色が強くなりすぎる。
しかし、このコピーではコスパの高さを日常の言葉で表現しているため、耳障りにならない。
C:credible 信頼性がある
「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。」 (ダイソン:dyson)
ダイソンの掃除機を持っていなくても、このキャッチコピーを聞いたことのある人は多いだろう。
こういったキャッチコピーが登録商標として権利化される事例はそれほど多くない。
この「ダイソン。吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。」のキャッチコピーは、「吸引力が変わらない、ただひとつの掃除機」であることが認められているため、登録商標として権利化されている。
日本での比較広告は、ほぼ皆無に等しいが、このコピーは第三者である公共機関が機能を認めることで、商品の信ぴょう性を深めている例である。
E:emotional 感情に訴える
「きれいなお姉さんは好きですか?」 (ナショナル美容用品)
男性であれば一瞬ドキッとさせられるコピーであり、女性であれば男性受けする女性(きれいなお姉さん)はどんなものか? と興味をそそるコピーと言える。
それくらい感情をくすぐるコピーである。
「聴衆の感情に訴えかけることで、より読み手の興味を引く」訴求のCM。
S:story 物語性
物語性①
「そうだ、京都へいこう」 (JR東海 京都キャンペーン)
会話調のコピーを使って、親近感が生まれ、聞き手(読み手)をグッと引き込む。
日常会話で頻繁に使う「そうだ、xxxxx」というくだりを使うことで、次のストーリーに連れていく仕掛けになっている。
物語性②
「自殺のわけがない。だってラップをかけてるんですよ。」 (サランラップ 旭化成)
「自殺」という強烈な言葉を中心に、短い文章で見事なドラマが描かれているCM。話している人、食卓、そしてそこにあるサランラップ、そんな情景がありありと浮かんでくる。
本来は、経緯などを交えてストーリー仕立に紹介することで、コンテンツにオリジナリティを持たせることができるのが、物語性の特性である。
それをCMは15秒で行うわけだから、完成度が高くないとストーリーらしさが受け手に伝わらないだろう。良くできたCM、コピーである。
記憶に焼き付いたり、相手を動かしたりできる「言葉」や「メッセージ」が「SUCCESs(サクセス)の法則」の要素を持っていることを理解していただけたと思う。
もし、自分が提案しようとしている「言葉」や「メッセージ」にその力がないのであれば、「SUCCESs(サクセス)の法則」の要素を持たせることで影響力あるのものに変えていくことは可能である。
今回は「コピーライティング」を取り上げて、「SUCCESs(サクセス)の法則」の使い方を説明した。
「プレゼンテーション」「Webコンテンツ」「Webマーケティング」の「SUCCESs(サクセス)の法則」の具体的な活用方法を知りたい方は、それぞれの専用のサイトで確認していただきたい。
プレゼンテーションのストーリーやWebサイトのコンテンツでは、コピーライティングとは違い「SUCCESs(サクセス)の法則」の要素が複数で出てくる場合もある。
もちろん、プレゼンテーションのストーリーにこの6つの要素がすべてそろえる必要性はない。
しかし、「単純明快で、意外性があり、具体的で、信頼性があって、感情に訴えるストーリー(SUCCESs)」があれば、あなたのメッセージは必ず相手の心に刺さるはずだ。