はじめに
著者である竹内謙礼氏は、現代は「一億総キャッチコピーライター時代」だと述べている。どの職業であっても「売れるキャッチコピー」が書ける必要があるという。
背景には、広告形態の多様化により、消費者が受け取る商品情報が爆発的に増えたことが挙げられる。消費者は、氾濫する広告の中から購入する商品を選ばなくてはいけない。
例えば「小型で便利!」「高級化粧品」などのありふれた特徴を書いただけでは、選ぶどころか、気づいてもらうことすらできないのである。
今は、そういった通販のキャッチコピーや店頭のPOPなどの広告を、コピーライター以外の人が書く時代になった。本書はそういった、接客業や営業マンといった人々が、売れるコピーライティングをものにして売り上げを伸ばすことが目的である。
そのため、センスの有無などを問われる内容ではない。「誰でも」キャッチコピーを作れるようになるために必要なノウハウが、実践的に紹介されている。
接客業や営業マンは、商品管理や提案営業などやるべきことが他にも沢山ある。そのため、本書は売れるキャッチコピーを最終的に「5秒」で作ることを目標にしている。
専業コピーライター養成本として書かれてはいないが、売れるキャッチコピーやその構造の説明は、それらに携わる人にも十分価値がある内容である。
Contents
誰でも「売れるキャッチコピー」を書ける必要がある。なぜなら確実に、キャッチコピーは売り上げを左右するからだ。
著者は本書の中で、一貫してそう述べている。経営コンサルタントとして経営を建て直すにあたり、キャッチコピーを武器にしてきた数多くの経験と実績があるためだ。
著者は有限会社いろはの代表取締役を務めており、店舗のキャッチコピー制作とネットビジネスのコンサルティングに関し、特に定評がある。雑誌編集者や観光牧場の企画広報などを経験し、その後、経営コンサルタントとして活動。多数のネットビジネス優秀賞を受賞している。
著者の考えるキャッチコピーにおける「強い言葉」とは、
- インパクトのある言葉
- イメージしやすい言葉
- 響きが良い言葉
である。例として、「便利」<「手放せない」、「豊富」<「なんと100種類」などを挙げている。「音が強い」「勢いがある」というより、消費者が振り向くかどうかがポイントだ。
どの言葉ならインパクトがあり響きが良いとされるかは、対象商品によって異なる。「大人気!!」より「ひそかに人気です」という言葉のほうが、ずっと効果的な客層もある。売ろうとしている商品がどのような客層などを狙いたいのか、商品や売り場の雰囲気も考慮して選ぶ必要がある。
著者が経験からまとめた「強い言葉」は、巻末の特別付録に収録されている。
言葉のイメージについての解説もあるため、ぜひ参考にしてみてほしい。
商品のキャッチコピーを作る上で強い言葉をある程度選び出したら、それを今度は「構文」にする必要がある。著者の例文は以下である。
「1日30個しか作れない!/本場フランス仕込みの/ふわふわチーズケーキ」(p.116)
(引き) (特徴) (説明)
このように、キャッチコピーを3つのブロックに分けてある。
まずは消費者に気づいてもらう「引き」。とにかくキャッチコピーに目を止めてもらわないことにはどうにもならないため、最も重要である。次が「特徴」であり、その商品ならではのオリジナリティを、イメージしやすい言葉で紹介する。最後は「説明」のブロックで、商品そのものの名称などがくる。
どういったチーズケーキなのか、しっとりなのかふわふわなのかなども、このブロックで説明する。
逆に、避けるべきキャッチコピーとはどんな文章だろうか。それは、3つ以上のブロックでできており、その上、言葉が重複しているものである。このように情報や無駄が多いと、伝達力は途端に弱くなる。
巻末には、著者が自身の経験からまとめた、コピーライティングに効果的な言葉が600語収録されている。「流行」「味・匂い」などの目的別に分かれており、誰でもイメージに合う言葉を見つけられるだろう。また、語句解説だけでなく例文まである。
「引き」に特別付録の言葉を入れ、「特徴」「説明」のブロックには売りたい商品紹介のPRをあてはめる。
最初のうちはこのように、商品に「より適している」と感じる言葉を選び、あてはめてコピーライティングをしてみるのも、おすすめの方法である。
本書は、経営コンサルタントである著者の経験や実績に基づいている。そのため「キャッチコピーがあったほうがいいだろう」といった、仮定や推察ではない。コピーライティングの必要性を今一つ理解できない人に、特にお勧めである。
また「実録レポート」は、著者自身がコンサルティングを手がけた企業が紹介されている。
料理店、商社、書店など幅広く、さまざまな業種の人が参考にできるだろう。
本書は「相手に商品を買ってもらう」ためのキャッチコピーを作ることが目的である。そのために必要な「強い言葉」とは、「インパクト・イメージ・響きが良い」の3つが揃っているものだ。最適な言葉は売り場により異なるが、共通点は変わらない。
通りかかった消費者の足を止めて実際の購入までつなげたい場合、とくにお勧めの内容である。
著者は、キャッチコピーは基本的に3つのブロックに分けられると説明している。それが「引き・特徴・説明」である。また、事例も数多く紹介している。
一方、売れないキャッチコピーの特徴や、どのように修正すれば伝達力が高くなるのかについても、具体的に述べてある。
キャッチコピーを書いたものの、商品の売れ行きがあまり変わらなかった人は必読である。
王道からの「変化ワザ」として、著者は2種類のキャッチコピーを紹介している。「話しかけ系キャッチコピー」と「突進系キャッチコピー」である。
「話しかけ系キャッチコピー」とは、「大変じゃありませんか?」など、消費者に質問し、悩みを解決するタイプのコピーである。商品がそれを解決してくれると「気づかせる」キャッチコピーである。
一方「突進系キャッチコピー」は、ひたすら消費者の注意を引くことだけが目的だ。「絶対に!」「独占!」「とにかく!」といった、インパクトのある言葉だけで作る。
そのため、コピーライティングで重視するものは「テンポ」であると著者は説明する。
第5章では、日常のさまざまな場所にある、コピーライティングを上達させるためのヒントを紹介する。
週刊誌やファッション誌のキャッチコピーは、商品を手にした後の「ステキな生活」をイメージさせるタイプのいい参考になる。通信販売は、消費者が商品を手にできないまま購入させなければならないため、他の売り場に比べ一層キャッチコピーが重要になる。参考の宝庫である。
書く方法だけでなくこういった勉強法もぜひ真似して、コピーライティングを磨きたい。
本書を通して著者が教えるのは、「売り場の商品を買ってもらう」キャッチコピーだ。消費者がまずは商品の存在に気づき、関心を持ってもらうためのきっかけ作りである。
そのため専業コピーライターのコピーライティングに特化した内容ではないが、これからコピーライターを目指す人、あるいは異なる職種でありながらコピーライティングも任されている人、少しでも提案書などの見出しのクオリティを上げたいと考えている人には、かならず重宝する一冊になるだろう。