読みやすい文章の書き方を解説する本は多々ある。
そんな中で『言葉ダイエット』の面白いところは、読みにくい文章の理由が「書きすぎ」にあると目を付けたところである。
はっとした方もいるのではないか。
・文章が長くなってしまう
・途中で自分でも何を書いているのか分からなくなる
・企画書やメールの意図が一回で相手に伝わらないことが多い
思い当たる方へ本書をお勧めする。
また、自分の文章が長いとは思わないが、企画書やエントリーシートが通りにくい方にもお勧めだ。
実は、無駄な表現や回りくどい言い回しが多く、読みにくい文章を書いているかもしれない。
ちなみに、敬語の使いすぎも読みにくさの原因となる。
タイトル:言葉ダイエット
著者:橋口幸生
電通コピーライター
最近の代表作
ロッテガーナチョコレート「世界ダウン症の日」
スカパー!堺議員キャンペーン、等
Contents
言葉ダイエットはこんな本だ
本書でいう「言葉ダイエット」とは、「文章から無駄を削る」ことである。
しかしそれは、面白さのかけらも無い堅い文章作るという意味ではない。
どこを省き、なにを加えたら読みやすい文章となるのか。
そこに徹底的にフォーカスしつつ、必要最低限の礼儀や文法は欠かさない。
言葉ダイエットにはそんなノウハウが詰まっている。
ビジネスの場や目上の人にも使える文章力を身に付けることができるだろう。
本書前半は、言葉ダイエットを8つのコツに分けて説明している。
文章から不要な表現を削る方法や、言葉の重複を防ぐポイントなどがまとめられている。
また、8つのコツ全てに、誰もが書きがちな長い文章の例と、それをすっきり読みやすくした修正例がある。違いが一目瞭然なので分かりやすい。
300文字ほどの例題文章が、言葉ダイエット後には、平均150~200文字まですっきり絞れている。
第三章では、実践で言葉ダイエットを使う方法が説明されている。
文章を下記3つの種類に分け、それぞれ例題とともに紹介している。
・日々大量に送受信する、連絡、報告手段の「メール」
・まとまった大量の文章を書く必要のある「企画書」
・就職、転職などで使う「エントリーシート」
順番に読んでもいいし、自分に必要な文章の項目から読むことも可能である。
本書後半には、読みやすい文章のお手本を、4つのテーマにわけて紹介している。
GODIVAの「義理チョコやめよう提案」、旭化成の「新技術の新聞広告」から、YouTuberせやろがいおじさんの「お偉いさんに一言」など、ジャンルを問わず、読みやすい文章をピックアップしている。
文章構成のポイントや、読みやすい理由が各テーマごとに丁寧に説明されている。
模範にして書く際に参考になるだろう。
言葉ダイエットでビジネス「っぽい」文章から脱却する
ビジネス文章とは
ところで、ビジネス文章とは何だろう。
・カタカナ英語が多い
・新人には難しい内容
・かたくマジメな文章
・礼儀正しく丁寧
上記のようなイメージをまとめて何となく「ビジネスっぽい」文章と認識していないだろうか。
それよりも、もっと大切なことがある。
それが「読み手が読みやすい」文章である。
著者は、コピーの依頼を受ける際、クライアントから100P以上の分厚い企画書をもらうことがあるという。
しかし、一読しても内容が全く理解できなかった、なんてことはザラにあるらしい。
どんなにビジネスっぽい文章でも、読んで意味が分からない文章では意味がない。
ビジネス文章は面白くない?
また、著者は、文章において「面白いこと」と「かたくてマジメなこと」は両立できると述べる。
著者はまた、「面白くない文章は読まれない」という考えを持つ。
もちろんそれはビジネス文章にも当てはまる。
しかし、「ビジネス文章に面白さは必要ない」と考える人が多いようだ。
そうした人は、「面白い」の解釈が間違っている可能性があるとも述べている。
本書は読者を飽きさせない内容が多い。
例えば第四章では、コピーライターの強みを生かし面白い文章を書くノウハウを記載している。
その例題はなんと「不倫を予防するコピー」である。
ちなみに、著者のコピーライター養成講座でも大変人気で盛り上がる例題だそうだ。
「っぽい」イメージで文章を書くのではなく、読み手のことを考えた文章を書けるようになってほしい。
では次は、「面白くて読みやすい文章」について、本書の内容を一部紹介しよう。
言葉ダイエットで、コピーライターだから伝えられる面白い、読みたくなる文章を伝授
新人コピーライターは、最初に「広告なんて誰も見たくない」という前提を叩きこまれるそうだ。
そのうえで、忙しい主婦が家事の手を止め、ついテレビCMを見てしまうような、面白いコピーを考える必要がある。
そのため、相手に読まれる文章を書くスキルが身に付くのだ。
著者は、コピーライターの視点から見た、読みやすく面白い文章のポイントを3つ挙げている。
・相手は自分の文章を読みたくないという前提に立つ
・情報の取捨選択をする
・発見のある文章を書く
相手は自分の文章を読みたくない
文章が長くなる要因のひとつは「読んでもらえる前提」で書くからだと著者は述べる。
内容が相手に伝わるか不安になる人は多いのに、そもそも読んでもらえるかを不安になる人はほどんどいないのだ。
その結果、真面目で気配り人ができる人ほど、確実に情報を伝えたいという思いでついつい書きすぎてしまうという。
まずは、相手は自分の文章を読みたくないという前提に立つ。
そうすることで読みたくなる文章について考えるようになる。
それが、長い文章になることを避ける一歩に繋がる。
情報の取捨選択
思ったことをそのまま書くことは誰にでもできる。
大事なのは、そこから必要なことを取捨選択することだと著者は述べる。
つまり、書くことよりも消すことが大切であり、難しいのだ。
特に現代は、回りくどい表現や、過剰に敬語を使って文章を長くしがちだ。
それらは、相手を思いやっているようにみえて、実は自分が嫌われたくない、相手の反応が怖いという書き手の思いも大きく影響しているという。
本書では、無駄な敬語の省き方に加え、トラブルの報告など、相手に伝えにくい内容を簡潔に失礼無く書くためのコツも掲載されている。
発見のある文章を書く
「読みやすい文章」とは、「面白くて読みたくなる文章」だと著者は述べる。
この「面白い」の解釈を間違えている人がいる。先に紹介した「ビジネス文章に面白さは必要ない」という認識などがそうだ。
面白いとは、松本人志のように笑いの取れるコメントをしたり、ギャグを入れることだけではない。
文章における面白さとは、文章の中に「発見」があることだと著者は述べる。
この発見とは何だろうか。例を挙げてみよう。
亀のコピーを書くとする。
・マイペースでいきましょう
このコピーの続きを読みたくなるだろうか。
では、次のコピーはどうだろう。
・亀の性別は、卵の中にいた時の温度で決まる
どうだろうか。
これが文章における「発見」である。
つまり面白い文章とは、読むことで何らかの発見がある、内容に興味を持てる文章のことだ。
では、この文章の中にある「発見」。書き手はそのネタをどのように探したらいいのか。
こちらは本書第四章に記載されている。
難しくはない。少し物事を見る視点を変えたり、日々の生活の中で意識するだけ実践可能な内容となっている。
また、見つけた発見を文章にする4つのステップや、発見をビジネス文章に落とし込む方法も記載されている。
終わりに
本書はタイトル通り文章がダイエットされ、分かりやすく読みやすい。
手っ取り早く自分に必要なノウハウだけが知りたい人は、それに関する項目だけ読める構成にもなっている。
しかし、一度は全て読んで欲しい。
言葉ダイエットとは、無駄な表現を徹底的に削り、要件だけを記載した堅い文章を作る文章術ではない。
状況によっては、「冗談」や自分の「体験談」などを「足す」作業も必要であると著者は述べる。なんでもかんでも削ればいいわけではない。
最低限の礼儀はもちろん、ちょっとした冗談だって、人間として読み手とやりとりするうえでは必要なことなのだ。
ちなみにこうした内容は、本編と少し離れた「スペシャル対談」の中でさらっと語られている。
文章を削るとは何か、読みやすい文章とは何か。
間違った認識を持たないためにも一読する価値はある。
本書を最初から最後まで読めば、確かに必要な項目だけを読むより時間がかかる。
しかし、某クライアントからの企画書のように、全部読んだけれどまったく意味が分からなかった、ということにはならないはずだ。
是非、あなたの文章作成に役立てて欲しい。
■プロフィール
小豆太
南の島国出身
求人広告営業、フィットネスクラブ、日本文化体験インストラクター等の仕事を経験
旅行やキャンプ、スイーツめぐり、身体を動かすことが好き