好意の法則をご存じだろうか。
初めて聞いたという人にとっても、日常生活で何度も体験してきたであろう心理状態である。
例えば、SNSで自分のコメントに「いいね!」をつけてもらったら、その相手に「いいね!」をお返ししてあげたくなったことはないだろうか。
また、人に「ありがとう」と言われたら、「どういたしまして」と返したくなるはずだ。
このように、人から好意を示されると、自分もそれを返さなければならないと思うのが好意の法則だ。
これは広くビジネスシーンで使われている手法である。
もちろん、コピーライティングでも絶大な効果を発揮する。
コピーライティングを通じて読者に好意を抱かせ、セールスにつなげていこうというわけだ。
この記事では好意の法則の解説と、コピーライティングへの応用の仕方をご紹介していく。
これからご紹介する内容を生かせば、読者に好意を抱いてもらい、商品やサービスを買いたくなってしまうようなコピーライティングができるようになるだろう。
■好意の法則とは
■好意の法則の実験
■コピーライティングへの応用
■好意の法則が効かないケース
■まとめ
好意の法則とは
好意の法則とは、人から何かをしてもらったり与えられたりしたときに、相手にお返しをしなければという感情が湧いてくる心理のことである。
好意の返報性とも言う。
これは、米国の社会心理学者ロバート・B・チャルディーニの著書「影響力の武器」の中で紹介された理論である。
好意の法則は、日常生活からビジネスに至るまであらゆるところで用いられている。
もちろん、コピーライティングにおいてもだ。
デパートやスーパーマーケットの試食コーナーで商品の試食をしたときに、「試食させてもらったのだから、買わないと悪いな」と思った経験のある人もいるだろう。結局、そのまま立ち去るのに後ろめたさを感じて商品を買ってしまう。
試食コーナーは決してサービスで用意されているわけでない。好意の法則を巧みに利用した商品を売るための戦略なのである。
つまり、客は試食をさせてもらった時点で店側から好意を与えられたことになり、そのお返しとして商品を買ってしまうというわけだ。
ちなみに、人がいる試食コーナーの購入率は上がるが、人がいない試食コーナーの購入率は変わらないということがわかっている。「人から提供されたかどうか」が重要なのだ。
無料サンプルの配布も同様の理論である。無料サンプルという好意を与えられた客の中で、無意識のうちに好意の法則が発動し、商品購入へと傾くのだ。
かつて、パナソニックの創業者・松下幸之助氏が「ナショナルランプ」というランプを発売し、1万個を世間に無料配布したことがあった。
その結果、「ナショナルランプ」は爆発的に売れたという。
どの例でも共通して言えるのは、まず売る側から与えるという行動をしていることだ。
そうすれば、好意を与えられた客は商品の購入というかたちでそれを返してくれる。
コピーライターが読者に与えられるもののひとつは、情報である。
読者にとって価値ある情報を与えられるかどうかが重要だということだ。
コピーライティングに好意の法則を盛り込むときは、このことをしっかり覚えておきたい。
好意の法則の実験
ここで、デニス・リーガンという心理学者が行った、好意の法則についての興味深い実験を紹介していこう。
これは、人から親切にされた被験者とそうでない被験者の反応を見ることで、好意の法則の有効性を実証する実験である。
被験者として集められたのはスタンフォード大学の男子学生81人で、美術品を二人一組で鑑賞して評価するという課題が与えられた。
だが、これは偽の課題であり、二人のうちのひとりは被験者に実験を仕掛けるサクラである。
そして、被験者はふたつのグループに分けられている。
休憩時間にサクラが飲み物をおごってくれるグループと、サクラが何もしないグループだ。
美術品を評価する作業が終わったあと、被験者はサクラから「車が当たる宝くじを何枚でもいいから買ってほしい」と依頼をされる。
この実験には、休憩時間に飲み物をおごってもらったグループとそうでないグループで、宝くじを何枚購入するのかを検証する目的があったのだ。
要するに、人から親切にされた被験者とそうでない被験者の反応を見るということだ。
結果は、何もされなかったグループよりも飲み物をおごってもらったグループのほうが、多くの枚数の宝くじを買っていた。
その数およそ2倍である。
さらにこの実験では、好感度の高いサクラとさほど高くないサクラが、飲み物を被験者に買った場合、宝くじの購入枚数は同じくらいだったという結果も出ている。
つまり、サクラの好感度の高低に関わらず、被験者は与えられた好意を返したくなったことがわかる。
相手を好きでも嫌いでも、好意の法則の下ではお返しをしなければという心理状態になるわけだ。
好意の法則がとても強力な原理であることが、お分かりいただけただろうか。
それを踏まえた上で、コピーライティングに好意の法則をどう応用していけばよいのかを解説していこう。
コピーライティングへの応用
ビジネスで好意の法則をうまく用いるためには、まず売る側から与えるという行動が重要になる。
そして、コピーライターが読者に与えられるもののひとつが、価値のある情報だ。
つまり、コピーライティングに好意の法則を応用するには、価値のある情報を読者に与えなければならないということだ。
これは先ほど言った通りである。
掘り下げて考えていくと、読者が知りたがっている情報を、惜しみなく、数多く提供していけるかが成功のカギを握ると言える。
価値のある記事をあなたが書けば、読者は知りたいことを知ることができ、書き手であるあなたに好意を感じるだろう。
同時に信用も得ることができるはずだ。
さらに価値ある記事を提供し続ければ、読者のあなたに対する好意と信頼はどんどん蓄積されていく。
そのような状態になった読者が、あなたから商品の紹介をされたらどうなるだろうか。
「いつも役立つ情報をくれるから、お返しに商品を買わないと悪いな」と読者が思う可能性は高くなるだろう。
また、記事の内容に読者を巻き込むことも、コピーライティングに好意の法則を応用する上で有効な手段と言える。
例えば、読者の悩みや質問に丁寧に答える記事をあなたが書くことで、「自分の悩みも解決してもらえるかもしれない」と、読者から広く共感を得られる可能性は高い。
そこから、あなたに対する好意につながっていくというわけだ。
アイデア次第でいくらでも応用が利くはずなので、いろいろ試してファンになってくれる読者を増やしていってほしい。
他に考えられる方法としては、少しコピーライティングから逸れるかもしれないが、何かを無料で提供するのも読者の好意を得られやすいと言えるだろう。
例えば、コピーライターの知識などをまとめた無料レポートを、特典として配布するといった方法だ。
「無料レポートスタンド」を利用すれば、見込み客のリスト収集も同時に行うことができる。興味のある人は調べてみてほしい。
その際とても重要になるのが、無料だからといって質の悪いものを提供してはならないということだ。
無料である分、内容が充実していればいるほど読者は好意を感じてくれるはず。
それが、記事を読みにきてくれたり、メルマガ登録をしてくれたりといった行動につながっていくだろう。
好意の法則がコピーライティングを行う上で強力な武器になることは確かだが、やり方によっては好意の法則が効かないケースもある。
次はそのことについて解説していこう。
好意の法則が効かないケース
先ほどの試食コーナーの例を思い出してほしい。
「試食させてもらったし、商品を買わないと悪いな」と思っていたところへ、「試食したのだから、商品を買っていってよ」という態度を店員がとったら、どんな気持ちになるだろうか。
商品を買う気が失せる人は多いのではないだろうか。
中には不快に思う人もいるかもしれない。
このような状態では、もう好意の法則は効かなくなっている。
その原因は、見返りを求めたことによるものだ。
コピーライティングを行う際にも、「有益な情報を与えたのだから、商品を買ってほしい」というような態度を読者に見せてはならない。
好意の法則を最大限活用するには、見返りを求めず与え続けることが大切なのはしっかり覚えておいてほしい。
そして、見返りを求めるあまり過剰な行動に出ることも、好意の法則を効かなくさせる原因となる。
例えば、コピーライティングを行う際に、記事の内容と関係のない無料特典を頻繁に提供したとしたら、読者はどう思うだろうか。
このコピーライターにわざとらしさを感じる可能性がある。
ターゲット読者も、興味のないものを頻繁に提供されて困惑するだけだ。
そうなると好意の法則は効かなくなり、「よほどメルマガ登録してほしいのだな」、「商品を買ってほしくてしょうがないみたいだ」などと冷めた態度を読者はとるだろう。
好意の法則はコピーライティングを行う上でも強力な武器となり得るが、こうした効果がなくなるケースもあるので、十分気をつけてほしい。
まとめ
好意の法則とは、人から何かをしてもらったり与えられたりしたときに、相手にお返しをしなければと思ってしまう心理である。
コピーライティングにも大いに応用できる原理だ。
そのとき大切になるのは、見返りを求めず、価値のある情報を惜しみなく読者に与え続けることだ。
ときに読者を巻き込んで、広く共感を得られるような内容を盛り込んでみたり、無料特典を提供したりといったように、さまざまな工夫をして好意の法則を盛り込めば、ファンも増えていくことだろう。
しかし、見返りを求めるあまり過剰な行動に出ることは厳禁だ。
もちろん、見返りを求めること自体もやってはいけない。
ぜひとも謙虚な気持ちで、読者に好意を感じてもらえるようなコピーライティングを心がけていただきたい。