コピーライティングの知識は、コピーライターしか使わないでしょ?
この「コピーライティング」という単語を見たときに、心のどこかでそう思ってはないだろうか?
「言葉を使って心を動かすスキルは、ビジネス全般で使える万能スキル」
『コピーライティングとアイデアの発想法』
本書の冒頭にはこのように断言されている。
なぜならどんな仕事でも、人と人とのコミュニケーションが必要であり、それを短く、効率よく言葉として伝えることができるのが、このコピーライティングの知識だからである。
本書『コピーライティングとアイデアの発想法~クリエイターの思考のスタート地点~』
は、クリエイター26名が、その言葉を効率よく伝えるための「アイデアの発想法」で重視しているポイントを解説している。
本書を読めばコピーライティングスキルだけでなく、 ビジネス全般で使えるスキルを底上げすることができる1冊だ。
Contents
1 『コピーライティングとアイデアの発想法~クリエイターの思考のスタート地点~』を読むことで得られるメリット
誰よりも知識が豊富なクライアントが、わざわざ外部に広告作成を依頼するのはなぜ?
それは多くの人の心に届くキャッチコピーをつくることは簡単なことではないからだ。
しかし裏を返せば、良いキャッチコピーはクライアントの商品の専門的な知識がなくても作れるということにもなる。
本書では26人のコピーライターが、効率良く言葉を伝えるための発想法が書かれている。
本書を読むことにより、簡にして要を得る効率の良い言葉の発想法を学ぶことができる。
そしてそれはどんなビジネスでも使えることができる万能の武器だ。
2 コピーライティングとアイデアの発想法point①【本質をみようとする視点】
1人目はクリエイター磯島拓矢さんのエピソードからの紹介だ。
まずは簡単に磯島拓矢さんのプロフィールから紹介する。
磯島拓矢さんは電通のコピーライターであり、主な仕事に旭化成企業広告「昨日まで世界になかったものを。」、大塚製薬ポカリスエット「自分は、きっと想像以上だ。」などがある。
ある日磯島さんは「メルセデスベンツCクラス」のキャッチコピーを考える仕事を任されたそうだ。
メルセデスベンツCクラスとは、普通のサラリーマンでも頑張れば買えるメルセデスベンツ中では一番下の廉価なクラスだ。
磯島さんはそのメルセデスベンツCクラスの新しいエンジンやデザインなどを捉えてコピーを考えたそうだが、すべて撃沈。
そんな中でアートディレクター島田清さんが考えたコピーに目から鱗だったそうだ。
そのコピーが
【いちばん新しいのは、ターゲットだ】
アートディレクター 島田 清 氏
というキャッチコピー。
このコピーからわかるとおり、このCクラスにおいて一番新しかったのは、エンジンでもデザインでもなくサラリーマン向けの車をだしたことだったということだ。
このようなコピーは物事の本質をみようとする視点がなければ生まれない。
そのためには製造者視点だけでなくユーザー欲求に基づいた目線で物事を俯瞰的に見ることが大切であるという事だ。
一見、「ターゲット」という言葉はマーケティングの専門用語のように感じ、ユーザー目線じゃないと感じる人もいるかもしれない。
しかし、よく考えて欲しい。
このコピーがメッセージとして伝えているのは、
「この車は、新しいお客様=ターゲットのための車です!つまり、これまでのように、ベンツ=お金持ちのための車というわけではないのです!そう、あなたたちのためにつくった車なんです!」
ということになる。
3 コピーライティングとアイデアの発想法point②【適度に知り、適度に知らない】
「適度に知り、適度に知らない」。
これはコピーライター谷山雅計さんのアイデアの発想法だ。
谷山雅計さんは、1961年大阪府生まれ。博報堂を経て1997年に谷山広告を設立。
主な仕事は東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、資生堂「TSUBAKI」などがある。
「適度に知り、適度に知らない」って?
どういうことかというと、コピーライターが考えたキャッチコピーを見るのは、見込み客(以下ユーザー)であり、そのユーザーは、クライアントが提供するサービスのことをあらかじめ知っているわけではない。
つまりそのユーザーのこころに響くコピーにするためには、ユーザーと同じ目線に立つ必要があり、そのためにはそのサービスを適度に知らないということが重要になるということだ。
例えば先のメルセデスベンツCクラスの話を例にだして説明すると、磯島拓矢さんはクライアント目線で、新しくなったエンジンやデザインを捉えてキャッチコピーを書いていたが、それをよく知らないユーザーからすればいまいちピンと来ない。
しかし島田清さんの【いちばん新しいのは、ターゲットだ】というのは、完全にユーザー視点のコピーであり、これは、そのサービスの事を細かく知っている人にはなかなか思いつかないコピーではないだろうか。
ディテールを把握していないからこそ、全体を俯瞰してみることができ、商品にかけている部分をみることができることを覚えておきたい。
4 コピーライティングとアイデアの発想法point③【検索上位20件の呪い】
「適度に知らないと言っても、まったく知らなければ、コピーは書けない。」
そこで知らないことを調べる際に誰でもすぐにグーグル検索をするが、そこで、陥りがちなのがこの「検索上位20件の呪い」だと谷山雅計さんは言っている。
これはどういうことなのかというと、ある事柄について調べた時、グーグルの検索を利用すると、誰が検索してもほぼ同じ情報がでてくる為、その情報を基にコピーを考えた場合、同じようなアイデアしか生まれなくなってしまうことだ。
これの解決策として、谷山雅計さんは2つの方法を提示している。
まず1つ目が「本屋に行って資料を集める」ことだ。
本屋で資料をあつめた場合、人によって選ぶ資料が違うため、必然的に発想の幅が広がることに繋がる。
そして2つ目が「最初の数時間だけ、検索に頼らずに自分で考える」ことだ。
まずは自分の頭で考え、アイデアが出尽くした段階ではじめて検索を使って欠けていた部分を補っていく。
こうすることによって自分の創造力も鍛えられ、新しいアイデアを生む力も同時に養うことができる。
これは何もコピーライティングに限った話ではない。
今の時代ほとんどのことは自分の頭を使うことなくインターネットを使うことにより解決することができる。
しかしそれでは他者と差別化を図ることはできないし、なによりも自分自身のスキル向上に繋がらない。
インターネットは最後の手段とし、まずは何事も自分の頭を使って物事を考える癖をつけていくことが重要だ。
5 まとめと感想
私が本書を読んで思ったことは、どのコピーライターも良いアイデアをだす為に自分なりの流儀があるということだ。
その中で最も多かった共通点が物事を俯瞰的にみるという事。
クライアント視点はもちろんのこと、ユーザー視点、一歩引いて世の中全体から見える視点。
様々な視点を考慮して、その広告が最も伝わりやすいコピーを選ぶ。
確かに、言われて見ればそのとおりだ。
世の中様々な立場の人がいて、皆それぞれ違った視点からその物事をみているわけだから、1つだけの視点を捉えてコピーを作っても全体に響かない。
しかし実際に自分が1つの視点でしか物事をみていないというのは自分自身では気付きにくいのが現実だ。
広い視野を持つためは読書も非常に有効な手段である。
本書は26人からなる本であり、私が紹介したものはごく一部に過ぎない。
是非手に取って読んで視野を広げてみてはいかがだろうか。