「思いを言葉にする力」を持っているだろうか?人間、誰も下が努力なくして語彙力を増やすことはできない。
物の名前や自分の気持ちを「やばい」や「すごい」といった言葉で伝えていないだろうか?
社会人になると、自分よりと大きく歳の離れた人たちと同じ土俵で戦わなければならない。
会議、商談、プレゼン、企画書……挙げればキリがないが、様々な場面で何よりも大切なのが、「思いを言葉にする力」だ。ことビジネスにおいては、自分の考えをアウトプットできなければ話にならない。
「思いを言葉にする力」を得るためには、語彙力や表現力以外の力が必要になる。
「博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」は、博報堂に35年間勤務し、コピーライター、会社の社長や政治家のスピーチライターとしても活躍している「ひきたよしあき」氏が上梓した本だ。
本記事では、そんなメソッドを個別に言及しながら解説を進めていく。さっそく始めよう。
ひきたよしあきプロフィール
博報堂スピーチライター・クリエイティブプロデューサー。
1984年に早稲田大学法学部を卒業後、博報堂に入社。
CMプランーナー、クリエイティブプロデューサーとして数々のCMを手がけた実績を持つ。その経験を活かし、明治大学をはじめ多くの大学で講義を行い、学生からの支持も厚い。
現在は、政治や行政、大手企業などから指名を受け、スピーチライターとしても活躍している。
著書に『大勢の中のあなたへ』『ひきたよしあきの親塾』(ともに朝日学生新聞社)、『短くても伝わる文章のコツ』(かんき出版)などがある。
Contents
- 1 1.博報堂スピーチライターひきたよしあきが考える25の珠玉のメソッドとは?
- 2 2.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、頭の中にあるものを知れ」
- 3 3.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、考える習慣をつけろ」
- 4 3.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、論理的に発想する力をつけろ」
- 5 4.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「コピーライターは、「真に伝わる表現力を磨け」
- 6 5.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド4.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「コピーライターは、「言葉に説得力を持たせろ」
- 7 まとめ
1.博報堂スピーチライターひきたよしあきが考える25の珠玉のメソッドとは?
まずは、25のメソッドについて、簡単に分けて解説しよう。
ひきたよしあき氏によれば、以下の方法で「思いを言葉にする力」を身につけることで、仕事に限らず、あらゆる場面で自身を持って表現ができ、自分が納得する人生を歩めると断言している。
コピーライターは、「頭の中にあるものを知れ」
言葉が思いつかないのは、脳がサボっていて働かないからだ。
脳は体の中でもっとも怠け者と呼ばれるくらいサボろうとするので、まずは脳を働かせるようにする。
「語彙力が不足している」「頭が真っ白になってすぐに言葉が出てこない」といった症状を治すのが目的だ。
コピーライターは、「考える習慣をつけろ」
日常生活をぼんやりを過ごしてしまいがちだが、その日常生活の中で「考える」ためのトレーニングを導入することを目的とする。
「なぜこうしたのか」と自分の言動を振り返り、意味づけし、仮説を立てることで、考える機会を増やすのが目的だ。
コピーライターは、「論理的に発想する力をつけろ」
ここでいう論理とは、筋道を立てることだ。
頭の中を整理し、情報の順番をつけたり、物事を俯瞰したりすることで、深く考えられる意識作りを目指す。
そのための「考える型」を解説する。
コピーライターは、「真に伝わる表現力を磨け」
わかりやすい言葉を用いるだけがコピーライティングではない。
人を共感させ、動かしてこそのコピーライティングだ。
自分事のように感じさせ、「私から動こう」と行動に移させるための言い回しや表現方法を解説する。
コピーライターは、「言葉に説得力を持たせろ」
上記の内容全てを身につけた上で、「信憑性を持たせる数字の使い方」や「話にリアリティを持たせる方法」など、説得力を持たせる伝え方について解説する。
相手との信頼を勝ち取り、よりよい関係に発展するための方法もあるので、是非身につけて欲しい。
2.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、頭の中にあるものを知れ」
仕事で意見を求められて、頭が真っ白になったりしたことはないだろうか?
「なんで?」の理由が言えない。「なんとなく」でしか言葉にできない。
意見を求められても適切な言葉が出ず、相手に伝わらない。そんな状態だと仕事でも支障が出てくる。
ここでは、そんな「思ったことが言葉にならない」状態を救うための方法を解説する。
30秒で、ものの名前を10個言う
人よりも語彙力が少ない……いわゆるボキャ貧であるのなら、まずは言葉を出す訓練から始めるべきだ。
そのために行うのが「30秒で、ものの名前を10個言う」こと。
良く脳の記憶は引き出しから取り出すようなイメージを持たれているが、実際はそうではない。
瞬間的に打ち上げ花火のように思い浮かぶのだ。
つまり、言葉が思い浮かばないのは、打ち上げ花火の準備が出来ているのに、湿気って火がつかない状態だ。
なら、湿気らないように訓練を行うしかない。
「30秒で花の名前を10個言う」「30秒で駅の名前を10個言う」など、なんでもいい。まずは自分の得意なものから始めてみて、短い時間の中でものの名前をパッと思い浮かべる訓練を繰り返し行うのだ。
思考の訓練なので、場所も時間も問わない。通勤途中でもトイレでもお風呂でも、どこでもできる。
言葉は、繰り返し言葉にしないと咄嗟に思い浮かんでこない。
「やばい」や「すごい」「おもしろい」と言った言葉でサボろうとする脳を、この訓練でたたき直そう。
形容詞を使うな
形容詞は、名詞をよりわかりやすくするために用いる表現方法だ。「臭い」「キモい」「大きい」「やばい」なんかがそれに当たる。
30秒トレーニングで記述した言葉が形容詞だ。言葉が思い浮かんでくるようになったら次は「形容詞に逃げない」ことを意識する。
形容詞に逃げるとはどういうことかと言うと、例えばみかんを食べた時に「おいしい」と感じたとする。
その時、「おいしい」で完結するのではなく、どうおいしいのか? 何をおいしいと感じたのか? 食べたことで自分はどんな気持ちになったのか? を言葉にするのだ。
例えるなら、食レポだ。テレビなどでタレントが食事の味を表現している様子を思い浮かべてもらえれば一番近い。
その際には以下の項目を意識すればいい。
1.聴覚、味覚、視覚、嗅覚、触覚などの五感を使って表現する
先ほどの食レポの例を思い浮かべて欲しいが、味覚だけでなく視覚や嗅覚、触覚といった情報をフルに使って行っている。
自分の身体感覚で伝わるように表すといい。
2.自分以外の人の様子を交えて表現する
ホラー映画を友人や家族と一緒に観に行った時に「一緒に映画を観ていた彼女は、ずっと目をつぶっていた」と表現すると、怖かったんだな、とより伝わりやすくなる。
第三者を有効活用しよう。
3.自分の過去や思い出の中から探す
「自分が過去に食べたラーメンの中でも3本の指に入る美味しさ」のように、自分の過去や思い出の中と比較する。
自分がそれに対して実績があったら、なお良い。
この場合だと「年間300回ラーメンを食べる」などだ。より信憑性が増すので、活用できるならしていこう。
風景をそのまま実況中継する
コピーライターが直面する問題として次に出てくるのが、「単語が浮かんでも文章にならない」状態です。
単語から文章へ、というのは赤ちゃんの言語発達と同じ。スムーズに言葉を操れるようになり始める過程なので、成長の証である。
単語を文章化する方法は簡単だ。情景を見て文章にするだけ。
難しいように感じるが、教本はかなり多い。
例えば、テレビやラジオのスポーツ中継なんかが最たるものだ。あれらを見る際にアナウンサーの実況に注目すると、見事に風景や状況を言葉にしているので良い勉強になるだろう。
自分で行う場合は、電車に乗っていたり歩いていたりする時に、情景を心の中で描写する。その際、アナウンサーのように流ちょうに行う必要は全く無い。「夕方です。屋根が見えます。たくさんあります」くらいでいい。
そうして続けることで、文章化する能力が高まっていく。
それに伴って、物を見る際の理解力が深まっていることにも気がつくだろう。
情景を実況することで、客観的に物事を見られるようになるため、自分の意見を伝える場合にも大いに役立つのである。
覚えた言葉を「鏡の中の自分」に向かって語る
言葉を文章化する能力を鍛えたら、次は暗記力を高めていく。
暗記を鍛えるために、少し大きめの鏡を用意するといい。そして鏡に写った自分に、覚えたことを教える。
その際、身振り手振りを使うとより効果が上がる。
ポイントは、自分が先生になったつもりでやること。「教える」気持ちを持つことが大切だ。
一日に何かひとつ暗記するように心がけ、それを自分に向かってアウトプットするのだ。
勉強でもそうだが、誰かに教えるとより理解力が上がる。それと同じ効果が期待できる。
同時に、暗記を欠かさず行うことで、脳に「怠けるんじゃない」と渇を入れる効果も期待できる。毎日何かを覚えることで、「記憶脳」が仕事をするようになるのだ。
その際、視覚情報を活用するといい。
学生がトイレの壁に世界地図を貼るように、いつでもどこでも記憶できるように場所を整えよう。
なお、ひきたよしあき氏が自分の文章をうまくなったと実感したのは、「日本の名作文学にある出だしの一行」を覚えはじめた頃なので、慣れてきたら文章の記憶にチャレンジすると良い。
大事なことを3つだけ記憶する
会議が終わった後に、「この会議で何を話し合われたか」を考え、3つにまとめる。もし会議で決まったことがあれば、それも3つにまとめる。
1つや2つだと会議全体をカバーしきれない場合が多いので、3つだ。4つ以上になると覚えきれなくなる。
会議が終わったら、ノートにその3つをメモしておく。それを暗記するだけで、次の会議に繋げられる。
この手法は人の話を聞くときにも有効で、「要するに何が言いたいんだ?」と考えながらメモを取るといい。
その人に質問したり会話する機会があった時にまとめた3つの単語を使って話すだけで、見る目が変わる。「自分の話を聞いてくれていた」というのは、人の心を動かす。
3つのポイントを見つけるのは簡単だ。
- 「つまり」「結論は」と意見をまとめようとした次の言葉
- 何度も口にした一言
- 発言者の声が大きくなった言葉
- 言い争いになった単語
などでいい。慣れないうちは単語だけでいい。
単語を3つ覚えたら、すぐに文章化する。それだけで、後から読み返してもすぐにわかる内容になっている。
3.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、考える習慣をつけろ」
次は論理的に深く考える前の段階として、「考える習慣」を身につける方法を解説する。
人の頭で考えるクセをつけろ
そのためには「人の頭で考えるクセ」が何よりも大切だ。
自分の頭だけで考えると、どうしても独りよがりな意見になってしまう。そうした場合に人の考えを引き出さなければならない。
「もし自分以外の人ならどんなことを考えるだろう?」
人の頭で考える目的は、自分以外の視点を持つことで、ものを多角化的に見られるようにすることだ。
優れた営業マンは、「相手の先の先を見る」と言われる。
ただ目の前の得意先を説得することに満足するのではなく、対応してくれた人が上司に説明するときにわかりやすいように話す。
まさしく、「得意先」の頭になって考える営業の極意だ。
「人の頭で考える」ことで、たくさんの視点を持って視野が広がるのだ。
日頃のなにげない行動にも理由づけをする
日頃から、「なぜそうしたのか?」と考えるクセを作る。
普段何気なく決めている昼食も「なぜ、食べたいと思ったのか」の理由を、声に出して言うといい。その際は大きな声でなくブツブツくらいでOKだ。
行いの源は全て頭の中にある。自分の行動は脳が命令なのだから、自分が行うことに対して脳がどんな命令を出したのかを考えることで、自分をコントロールできるようになる。
脳の出した命令を自分で復唱しながら動くことで、理由をすぐに言える体質へと変わっていくのである。
主語を三人称にして考える
前述したような自分の行動を考える方法は、もうひとつある。
それが、主語を「私」から「彼」「彼女」といった三人称に変えることだ。
三人称、いわゆる神の視点になることで、自分の行動からある程度の距離を置け、客観的に見られるようになる。
「実況中継」をする際にやってみてもいいだろう。急に尋ねられても明確に答えれる自分がそこにいることに気がつくはずだ。
「○○しばり」で要点を明確にせよ
人と話すときに大事なことなのだが、あれこれと矢継ぎ早に言っては相手に伝わらない。
人と話すときは「今はこれだけを話す」と「しばり」をかけてみるといい。
会話中にどこがポイントかを明確にして、それ以上は話さないことを徹底すると、話の内容がとっちらかずにひとつにまとまる。
主張はひとつ、理由は3つを徹底せよ
短く語って相手に伝えるための方法で、もうひとつ大事な要素が、「主語はひとつ、理由は3つ」という原則だ。これを意識することで、短く論理的に人に伝えられる。
3つの理由の探し方は様々あるが、主に使われているのは「トレンド」「特性」「お得感」になる。
例えば彼女へのプレゼントを選ぶなら、「色は赤(主語)。今年のラッキーカラー(トレンド)、彼女の暖色系のコートに合う(特性)、イタリア製の割には安い(お得感)」といった具合だ。
「○○という考え方」で仮説を立てる
自分だけの仮説を立てることでオリジナリティへとつながっていく。
「○○という考え方」をするだけで、言葉の戦略化ができる。今まで自分が見ていた世界とは全く違ったものが見られるようになる。
「アイスクリームは白くて冷たくておいしい」ではなく、「アイスクリームはバケーション」というような考え方をしていると、新しい「切り口」を発見できる。
考えるクセを身につけるために、日常生活でも積極的に使っていこう。
ひとりブレストを行う
ブレインストーミング(通称ブレスト)は通常複数人で行うものだが、これをひとりで行う。
実際、物を考えることはひとりでブレストをやっているのと同じだ。
頭に浮かんだもの、だけでなくていい。ひきたよしあき氏は自信の経験から「33案でいい」と言っている。
立派なアイデアを出す必要も無く、思いつきやネタでいい。
まず自分で集められる情報や、パッと浮かんだ思いつきをどんどん書き出すのだ。そうすることで、アイデアの神様は必ず降りる。
案を出しさえすれば、後はそれらを組み合わせて新しいアイデアを考える。
3.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「ライターは、論理的に発想する力をつけろ」
考える型をマスターしたら、次は論理的に発想する力をつけよう。
以下で詳しく解説していく。
物事の真意を知るために「なぜ」を5回投げる
商品を紹介する際に気をつけたいのは、「相手は自分より商品の情報を知らない」という点だ。
そのため、相手は心配や不安を必ず持っている。
その心配や不安を解消するためのメソッドとして「トヨタ式生産方式」がある。その中で「5のWHY」を実践するというものだ。
内容は簡単で、「なぜ?」を5回、バラバラと質問を変えずに深掘りしていくだけ。
前「なぜ?」で答えた質問に対して更に「なぜ?」と質問を投げかけるのだ。
そうやって自分の知識を追い込むことで、物事を深く考えられるようになる。
弁証法を使う
弁証法とは、哲学者ヘーゲルが提唱した考え方だ。
弁証法は難しい哲学では無く、「意見」と「反対意見」を調整し「高い次元の意見」を作る方法だ。
この際、「賛成」と「反対」が対立していては意味がない。生産的な意見を作るように意識することだ。
伝えるひとりをキメ、その人をすみずみまでイメージする
データがいくら立派であっても、その読み方を間違えれば、データの意味がなくなる。「売りたい相手を明確にする」ことで、データをより活かせられる。
その際は、ターゲットをより具体的に描くのがポイントだ。
名前、性別、年齢をしっかりつけた後、家族構成や職業、居住地などを決めていく。そうして売りたい相手を明確にすることで、オリジナリティのあるものが生まれるのだ。
擬人化させる
相手がイメージしやすいように商品を擬人化させるというのも良い手段だ。「商品に命を吹き込む」とも言う。
例を挙げるなら「アメリカはドラえもんに出てくるジャイアンみたい」などだ
例えがわかりやすければやすい程、相手がイメージしやすく、共通認識が生まれやすくなる。難しい話も簡単に伝わる。
話のうまい人は大抵「例え上手」なのである。
ゴールから考えて見えていない場所を明らかにする
関西人と話していると「で、オチは?」と言われる場面があると思う。彼らはオチを最初に決めて話すクセがついているから、商談でも強い傾向にある。
最後の言葉を決めて話を練る方法をバックキャスト思考と呼ぶ。
ゴールを想定して俯瞰することで、論理的に俯瞰できるので、足りないことなどが見えるようになるのだ。
企画が全部できてから、などと考えていると時間が足りなくなる。バックキャストでゴールを最初に描いておけば、間違えても途中で修正できる。
4.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「コピーライターは、「真に伝わる表現力を磨け」
真に伝わるとういのは、単にわりやすいだけではない。相手が動いてはじめて伝わったと言える。
相手に伝えるにはどうしたらいいのかを、解説していく。
書くときも話すときも40文字を意識する
相手に伝えるために一番重要なのは、「短く伝える」ことだ。
ひきたよしあき氏は40文字を提唱している。40文字が大体、一息で読めて内容もまとめられるギリギリの文字数だからだ。
政治家が選挙の時に同じメッセージを繰り返すのも、40文字が基本となっている。それ以上長い言葉になると、人の耳に残らないのだ。
話し言葉だけでなく、メールで文章を書く際も意識しよう。
「動かしたい動き」を具体的にたくさん入れる
どういうことかというと、人に行動を促す伝え方のことだ。
人は、働きかけに弱い。
動かしたい動きを書くと、心や頭ではなく、身体に呼びかけることで、人は動く傾向にある。
話の中に「動詞」をたくさん入れると、人の心を動かせるようになるのだ。
学生時代に習ってきた文章の常識を疑え
動きのある文章を書くには、「実際の行動を書いた文は過去のままで。様子を説明する文は現在形で書く」とある。
これに即して文章を書くことで、印象ががらりと変わるのがわかるはずだ。
伝えたいことを強調する
人をぐっと引きつける語法は、必要ないものを捨て、強調したいものをフォーカスする方法だ。
「ラーメン“の”スープが美味しかった」のように、「の」を使って強調するのが一般的。
「の」はカメラの望遠レンズに近い言葉です。つけることで対象をズームできるので、伝えたいポイントがわかりやすく、相手にも伝わりやすくなるのだ。
主語を「私たち」にして、相手の気持ちを引き込む
相手を巻き込む秘訣は、「自分ごと化」させることだ。
オバマ前大統領を覚えているだろうか? 彼の演説には頻繁に「We(私たち)」を多用していた。
あれは国民に向かって「私たちは」と語ることで、アメリカをひとつにする役割を持っていた。
人は「私たち」と言われる方が「自分ごと」のように感じられる。
会議でもプレゼンでも、自分の主張を通すのではなく、相手と「共通の物語」を作って一緒になってやっていくように心がけることだ。
5.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド4.博報堂スピーチライターひきたよしあきの25のメソッド「コピーライターは、「言葉に説得力を持たせろ」
最後は、これまでの+αのテクニックとして「信憑性」や「リアリティ」を持たせる方法を解説する。
この内容を身につければ、相手の心をぐっと掴めるだろう。
苦労や失敗談のネタをストックする
人は、人のプライベートに最大の関心を持つ。これは人間の習性だ。ワイドショーや週刊誌が売れているのは、興味を持つ人が多いからだ。
その習性を利用し、自分のプライベートな情報を効果的に使うことで、相手に深く理解した気になってもらう方法だ。
「私だけにプライベートを教えてくれた」と思ってもらえればしめたものだ。
そのためにも「とっておきの話」をストックしておくといい。
学生生活、親との関係、失敗談などなど、生まれてから最近までの中でエピソードをピックアップしてまとめておく。
そうすることで「自分がどんな人間か」を自分で整理できる上に、相手に投げるためのネタとしても使える。
人は苦労話が好きだ。失敗や挫折を乗り越えた話に勇気づけられる。そういった話をいくつか作っておくといいだろう。
「あいまいな形容詞に変わる数字」「へぇ、と声が出る数字」だけを使う
数字やデータを使うのは、社会人として当たり前だ。
しかし数字は効果的に使ってこそ意味がある。多用しては効果を発揮しない。
わかりやすい数字とは、相手がイメージしやすい数字だ。
例えば、「今日はめちゃくちゃ暑い」より「今日の気温は40度を超えているよ」と伝える方が、イメージがしやすい。
「少し遠い」や「暑い」など人によって感じ方の違う表現を、正確に伝えられる数字を、「わかりやすい数字」と呼ぶ。
「へぇ、と声が出る数字」はもっと簡単だ。
うちの商品はこのターゲットなら売れるかも、と思わせる数字のことだ。
この際に注したいのが、誰もが実感のない例を探すより、わかりやすく図形化、グラフ化することを考える。
ただし、言葉に頼りすぎてもいけない。
人間は聴覚よりも視覚に頼って生きている。つまり視覚に訴えた方がイメージしやすい。
「東京ドーム○個分の広さ」「レモン○個分のビタミンC」など言われてもわからない人が多いのに使われているのは、視覚に訴えやすいというメリットがあるからだ。
メモ帳を持って街へ行く
街にはネタが溢れている。
街に出て、耳をダンボにして人の話に耳を傾ける。
そうすると、思わぬ名言と出会うだろう。そういう言葉を集めることで、より言葉に力が宿る。
人から発せられた血の通った言葉を「肉体語」と呼ぶ。
肉体語を駆使して語る人には説得力がつく。是非使っていこう。
朝、その日の話題を仕入れる
天気の話題をしたことがあるだろうか?
共通の話題で話の取っかかりを掴む方法だが、営業のプロはより情報を収集している。
新聞の一面やネットニュース、ワイドショーや電車の中吊りまで、話のつかみになりそうな情報を、得意苦手問わずにとにかく仕入れている。
それが、営業というコミュニケーションのプロが行っている方法だ。
「ありがとう」を今の5倍使う
「ありがとう」は、ビジネスを手折らず人間関係を円滑に進ませる魔法の言葉だ。
浜村淳は一日に何度も「ありがとう」と言う。彼を嫌う人はいないとまで言われるほどだ。
「感謝の言葉」には相手の気持ちを一瞬で和らげ、気持ちを前向きにする効果がある。
ただ口にするだけで相手との関係が良くなるのなら、使わない手はない。
しかし、ただ「ありがとう」と言うのでは無い。
何をされて嬉しかったのかなど、「感謝」「具体」「行動」をセットで伝えるといい。
どんな仕事であれ、どんな場面であれ「感謝の言葉」を述べることを意識しよう。
まとめ
今回解説した合計25のメソッドは、博報堂コピーライターのひきたよしあき氏が35年に渡るコミュニケーションから生まれたものだ。
どれも日常で練習できる方法で、5日もあれば身につく内容となっている。
- 頭の中にあるものを知れ
- 考える習慣をつけろ
- 論理的に発想する力をつけろ
- 真に伝わる表現力を磨け
- 言葉に説得力を持たせろ
日々実践し生活に取り込んで、日常生活やビジネスに活かして欲しい。