Contents
「文芸オタクの私」こと、三宅夏帆(みやけかほ)さんとは
この本は、コピーライティングのことを直接書いた本ではないが、コピーライターを志す人やコピーライティング技術をもっと磨きたいという人にとって、とても役立つことが書かれている。
本書を紹介する前に、まずは著者の肩書きから書いてみたい。肩書きなんてと思われるかもしれないが、肩書きはわかりやすいし、日本人は、肩書きがきっと好きである。それに著作物を理解するには、妥当な「はじまり」だと思われる。
三宅夏帆
京都大学人間環境学研究科博士前期課程修了。
大学院で萬葉集を研究する一方、天狼院書店の店長として勤務していた。
そこの書店のウェブサイトに掲載した記事がきっかけである。
その後、出版した「リーティング・ハイ」がはてなブックマーク数、ランキング第2位に。
そして書評する「文芸オタクの私が教えるバズる文章教室」を執筆。
わかりやすく文章を解説、読む人が書きたくなる本を文筆家、書評家として世に送り出してきた。
現在、会社員との2足のわらじを履き活動中である。
三宅夏帆さんの人物像
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/bazuroom2-1024x576.png)
気になってネットで調べてみると、様々な情報が出てくる。
ツイッター、メルマガ、ブログ、ネットで「文章教室」を授業、さまざまな分野で活躍していることがたくさんヒットした。
絵本の書評から時事ネタから幅広くクリエイティブに活動されているではないか。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
もっと早く知っておきたかった・・
三宅夏帆さんについて、私はますます興味を持ち始めた。
彼女は自分自身のことを『大学生のとき、私に愛情をもっとも与えてくれた相手は、彼氏でもなく友達でもなく家族でもなく「本」だったと感じている』と語るくらい、根っからの本マニアと自称している。
今まで読んだ本はコラムなども合わせると、数百冊、いや千冊以上あるかもしれない。
そこから抜粋して「バズる文章教室」に載せた面々は、彼女の心をよほどバズらせたのだろう。
「バズる文章教室」のねらい
もともと、本書はSNSなど日常的に情報を発信している人に役立つようにと考えて書いたそうだ。
だが、普段めったに文章を書かない人にも、これから文章を書いてみようと考えている人にもあまり知られていない
「読みたくなる文章のからくり」を楽しんでもらいたい、という思いも、著者である彼女には多くあったらしい。
※バズる・・・爆発的にインターネット上のクチコミなどを通じて広まること。Buzz(ガヤガヤ噂話をさわぐ)から由来されている。
「バズる文章教室」の魅力
例えばお笑いで「天丼(てんどん)」っていうテクニックをあなたは知っているだろうか。
揚げたてサクサク大人気!じゃない方の天丼だ。
同じギャグやボケを二度三度言って笑いを何度もとる。
一度までも二度もおいしい、時間差で使ってもおいしいみたいなテクニックだ。
彼女は、この技術に関しても、文章化することができると言っている。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
お笑いで聞くと何気なく耳に入るだけだが、文章にしてみると・・これは・・!と気づく人もいるはずだ。
難しい言葉でなく、読みやすく解説してくれているので入ってきやすい。
「バズる文章教室の偏見」
バズる文章には偏見がある。それは、多くのバズ文章が、パクりから成り立つと考えられるためだ。
人の文章をパクっているだけだ。
と皮肉的に感じる人もいるかもしれない。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
しかし、人は生まれてから、親の言葉をパクり、兄弟の言葉をパクり、友達の言葉をパクり
祖母の・・・・とここまでにする。
他の例えだと、転勤で色々な場所に行くと方言がうつることがある。
北海道では、耳から離れない「なして〜?」
福岡では、テンションが上がる「好うとう」
京都では、語尾を伸ばしても上品な「寂しいわぁ」
広島では、思わず聞きいってしまう「じゃけぇ」
パクると言葉が悪いがそうではない。
人は好きな人の真似をするものだ。
ファッションでも仕草でも、そういった意味でだ。
あなたの「バズる文章教室」で気に入った文章テクニックを真似してみると、案外他の人があなたを真似したくなるかもしれない。
三宅夏帆さんが選んだ4つのテーマ
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/bazuroom33-1024x576.png)
「バズるつかみ」、「バズる文体」、「バズる組み立て」、「バズる言葉」の4つのテーマに何人もの著名人が出てくる。
一人ずつ紹介しては、みんな大好きなyoutubeに飛んだり、他のリンクに行ってしまうので抜粋して紹介しよう。
「バズる文章教室」に出てくる有名人
村上春樹や林真理子、森鴎外、さくらももこ、こんまり、岸政彦など昔の言わずと知れた小説家からマンガ家、タレント、社会学者と多岐にわたり登場する。
全員知っている人は少なくても、全員知らない人はいないだろう。
知らない人でも文章を読めば、どういう人なのかわかるはずだ。
文章はひととなりを示すものだと、個人的に思っているからだ。
バズる文章教室「バズるつかみ」
未解決疑問モデル 星野源の未熟力
「どういうわけか、洗面台がビシャビシャになるんです」
という問いかけから始まり、洗面台がなぜビシャビシャになるかの疑問解決をはさむ。
(中略)
「なぜか自分の後ろにまで水滴が飛んでくる始末で、ここまでいくと水に意識があって私に嫌がらせをしているとしか思えない」
「そして生活はつづく」より
と最後まで答えを提示しない。
実に上手いつかみ方である。
簡単に話そうとすれば、「洗面所がビシャビシャなんです。おそらく、前日の歯みがきで水滴が残っているんだろう。それでも毎日、洗面所がなぜかビシャビシャになるから困っています。」
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
上と下の文章の違いがわかるだろうか。
上は相手に話しかけるように始まり、そして最後に相手にも「なぜそうなったのだろう?」と一緒に考えさせる甘え上手な文になる。
下はすでに完結していて読者の気持ちがついてこない。
シンガーソングライター、俳優とマルチに活躍されている方だが話も多才であるとわかる。
解決策はある。
洗面所はあのお相手がキレイにしてくれるのではないだろうか。
バズる文章教室「バズる文体」
名詞止め 綿矢りさの簡潔力
デビュー作「インストール」、その後「蹴りたい背中」などで有名。
数々の賞をとってきた方だ。
彼女の文章は、「さかきちゃんは美人。でも亜美ちゃんはもっと美人。
(中略)
さかきちゃんは美人。でも亜美ちゃんはもっと美人。
明白な事実。
「亜美ちゃんは美人」より
ここまで体言止めが続くと微笑ましくも、説得力のある文に変化する。
「さかきちゃんは美人です。でも友達の亜美ちゃんはもっと美人です。」
同様のことを言っているが、上記の方が爽快感がある。
そして、「明白な事実」で控えにいたピッチャーが押さえに入る。
長い金太郎あめを短くブツブツ切っていくとしよう。
最後も金太郎の顔が出てくると思いきや、そうでなかった。
金太郎が熊を投げ飛ばしている絵が出てくるように思える。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
そんな文章の書き方である。
バズる文章教室「バズる組み立て」
同意先行モデル 高田明の視点力
高田さんて誰だろう?
あのジャパネットたかた社長のことだ。
テレビでよく見るが、商品を買いたくなる衝動にさせる原点はどこにあるのだろうか。
「普段の生活でこんなことはありませんか。
立った姿勢で靴下を履くのがキツくなった。買い物かごを持つのが辛くなった。
(中略)
だったら足腰を鍛えましょう。ウォーキングしている人が多いでしょう」
そこから
「シューズの生活の中での役割や使い方の話をしていく」
「伝えることから始めよう」より
あるあるネタから始まり、ウォーキングが大事と自然に提案し、シューズの生活の中での役割や使い方へと進めていく。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
なるほど!
シューズの機能、カラーや価格から提案されても釈然とせず、チャンネルを変えられる恐れがある。
そして、消費者の心を先に引きつけてからだと最後まで聞いてみようとなる。
商品ではなくあくまで消費者の立場になって考えてみてはどうかと改めて考えさせられる文章だ。
バズる文章教室「バズる言葉選び」
緊張と緩和モデル 又吉直樹のかぶせ力
お笑い芸人でもあり小説家でもある独特のワールドを持つこの方。
『当時お付き合いしていた彼女から「今日は何の日?」と聞かれた。
六月十三日だった。その瞬間、脳裏に太宰の顔が浮かんだ。
彼女は「初めてキスした日だ』と僕に告げた。
(中略)
太宰のことが気にかかり頭から離れないので本を開いて見ると、六月十三日は太宰治が玉川に入水した日であった。
「ファーストキスが太宰の命日」(ここでギャップ)
大人気アイドルがリリースしても絶対に売れない曲のタイトル。
「第2図書係補佐」より
思わずクスッと笑ってしまう一文である。
ないもの同士の化学反応は実におもしろい。
文章のどこかで違和感を作ると、よりおもしろみのある文になると発見させられた。
「ポストの口がファーストキス」
「太宰の命日にシャンパンコール」
又吉先生ほどではないがこんな感じだ。
見た目が死神みたいなので吉本N S Cで死神と呼ばれていた。
そのあと入ってきたハリセンボン、箕輪はるかが入所し「エリートの死神」が入ってきたなとテレビで言っていたのを思い出した。
淡々と語るなか、自分を含めスタジオで笑いが起こる。
文体にすると、そこは1対1の世界。
![](http://copywriting-magazine.com/wp-content/uploads/2021/08/miyake_kao.png)
どれくらい自分が笑えているか、ものさしで測れる良い機会にもなる。
「バズる文章教室」のまとめ
長くなったが、いかがだったろうか。
これなら真似できそう!参考になった!続きが気になる・・というテクニックがあったかもしれない。
他にも本書には、以下のような内容が詰め込まれている。
- SNSで「いいね」がたくさんほしい。
- そしてフォロワー○万人!
- アンバサダーに就任。
- 夏休みの読書感想文の書き方がわからない・・・
- 読んでみてコツをつかめたかも。子供にアドバイスしよう。
- 会社のプレゼンのつかみにしよう。
- 生活スタイルが違うみなさんのニーズにどこか合うだろう。
- 文章が好きになり、言葉が好きになり、会話が好きになる。
顔の見えない相手だとしても、たくさんの人が「「あなた」を好きになることをこの「文系オタクが考えたがお手伝いしてくれる。
興味のある人は、是非、本書を手にとってもらいたい。