『最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 (中村禎)』、コピーライターの頭の中?

売り上げを上げるために、人の心を動かしてモノを買ってもらうために、どうやったらいいコピーが書けるのだろうとか賞をもらったり、売り上げを伸ばしたりすることができるコピーライターの頭の中はどうなってるんだろう、なんて考えたことはないだろうか?

そんな方におすすめなのが、中村禎さん著「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 」という本だ。

中村 禎(なかむらただし)

フリーエージェント・コピーライター
クリエイティブ・ディレクター

1957年 福岡県北九州市門司区生まれ
1979年 成蹊大学在学中コピーライターの適性をはんだんするため、宣伝会議コピーライター養成講座ヘ
1980年 J・Wトンプソン・ジャパンに営業職として入社
1981年 サン・アド入社 中畑チームコピーライターとなる
1988年 電通へ移籍
2016年 電通から独立 フリーエージェント・コピーライターとして活動開始

受賞歴
1982年 ソニーのコピーでTCC最高新人賞
1993年 さくら銀行企業広告シリーズでTCC賞
2001年 KDDI合併広告シリーズでTCCグランプリ
2004年 阪神タイガース優勝 星野仙一監督応援感謝広告でTCCなど数々の広告賞を受賞

現在 コピー年鑑最終審査員、宣伝会議賞最終審査員
ピンクリボンデザイン大賞審査委員長
東京コピーライター図クラブ事務局長を務める
宣伝会議コピーライター養成講座専門コース講師は2017年で14年目になる。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」という本は、その名に恥じない本なのか?

「最も伝わるコピーが書ける方法」というタイトルではなく、あくまでも「言葉を選び抜く思考法」となっている。

なので、そのタイトルどおりコピーがスラスラと書けるようになる方法というより、いいコピーが書けるようになるためにまずたくさん書けるようになって、その中からホンモノを選び抜くことができるようになるための思考法が書いてある本だ。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」という本は誰に書かれた本なのか?

魚屋、ビジネスパーソン、政治家などの例を挙げて、世の中のあらゆる仕事はクリエイティブであり、言葉はすべて広告コピーの要素を持っているといっても過言ではない。

広告コピーを学んでおくとどんなことにも役に立つ、と筆者の中村禎さんは述べている。

つまり、何かものを売りたい人その売り方を工夫して売り上げを上げたいと思っているすべての人に向けて書かれた本であるといえる。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」という本を読むことで、読者は何を得られるのか?

例えば恋愛にしても相手の心を動かして、自分を相手に売り込む。だから、人生のすべてにおいて上手く売り込む方法を学べる本とも言える。

よく作家などが小説を書くときに「何かが書かせた」みたいなスピリチュアル的な話を耳にする。それと同じで、コピーもインスピレーションみたいのものがキラッと降りてきて唯一無二のものが1本サッとできるのかと思いがちだ。

しかし、この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」には100本書いた中で№1の1本と10本書いた中の№1の1本は質が違うと書いてあり、とにかく1つの課題に対してできるだけ多くの視点から多くのコピーを書くことを推奨している。

そして「いいコピーを書いているコピーライター」 は 実は、「いいコピーが選べるコピーライター」 であり、そのたくさん書いたコピーの中からいいものと悪いものを見分ける目(それは誰も教えてくれない)を持てるようになることが重要なのだと語る。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」という本の特に面白い、興味深い点はどこなのか?

当時、未経験だった著者の中村禎さんが「経験3年以上」という条件のある入社試験を経てサン・アドに入社できた理由は「サン・アドに入って私がやりたいこと」という作文が面白かったからというところが面白かったからだ。

その作文の経緯を説明すると、コピーライター養成講座の講師である岡田耕さんは当時、電通の部長クリエイティブ・ディレクターで、隣席にはライバルである山川浩二さんというクリエイティブ・ディレクターがいて、山川さんも別のコピーライター養成講座のクラスの講師をしていた。

山川さんはいつも「うちのクラスからは糸井(重里)クンが出たんだよね。岡田君も講師やってるんだって?」と言って岡田さんは悔しい思いをされていたということを著者の中村禎さんは耳にした。

それで著者の中村禎さんは

「糸井さんみたいになる、とはおこがましくて言えませんが、サン・アドには中村禎という、なかなかいい新人コピーライターがいるらしいね、くらいになって、岡田さんに肩身の狭い思いをさせないようにしたい」という内容の作文を書き、中畑貴志さんがそれを読んで「こいつを取ろう!」と社長に進言してくれたのだ。

入社試験も人の心を動かす作文というコピーで勝ち取っている点が興味深い。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 」という本から学べたテクニックを3つあげると、それは何か?

出来上がったコピーを声に出して読んでみるという方法

声に出して読みにくい文章は、目で追っても読みにくい文章だから、自分が書いたコピーをまず自分の声で読んでみて、聞いてみてすんなり入ってくればOKで、いいコピーというのは不思議と読んでも恥ずかしくないものなのだそう

ターゲットを特定の誰かに絞るという方法

広告にはターゲットがいて「年収いくらの世帯の〇〇代の主婦層」とか、「何線沿線の一人暮らしの20代の若者」とか細かく設定されることもある。

だが、著者の中村禎さんがコピーを書くときは、特定の1個人をターゲットにして書くという。

漠然とした団体を思い浮かべるのではなく、実在の1人の顔をハッキリ思い浮かべながら書く、それは自分の身内でもいいし、友人でもいいし、電車に乗った時にいる目の前の乗客でもいい、と。

その一人の人の顔を思い浮かべて書く方が「世間」とか「世の中」とかがターゲットであるよりも反応が想像しやすいからだ。

大勢のことを思って作ったものでなく、誰かを思って作ったものが、結局大勢の心にも届くという現象がある。

迷ったときは離れたところに置いてみて客観的に見てみるという方法

語尾の違いや言葉の違い、漢字かカタカナかひらがなか迷ったら、プリントアウトして、壁に貼ったり、床に並べたりして離れて「見る」とのこと。自分の体から距離を離し、手の届かない場所に置くことで自分の作品が、他人が書いたもののように客観的に見えてくるという。

また、そのコピーがいいかどうか迷ったときは、身近な3人に聞いて2人がいいといえば良しと判断してみるということも書いてあるが、選んでくれる人が周りにいない場合でも③の方法なら可能だ。

【最後に】

宣伝会議の講座を受講するには十数万円かかる。

しかし、定価(税込み)1870円、kindleなら0円だ

私事で恐縮だが、私は2001年の宣伝会議コピーライター養成講座の受講者だ。

しかし、この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 」という本の著者である中村禎さんは、2003年からコピーライター養成講座の講師を担当していたため、残念ながら中村禎さんの講義は受けられなかった。

この「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法 / 中村禎」という本を読んでみて、十数万円の養成講座と同等の価値がある、そんな印象を得た。