【書評】阿部広太郎『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』の感想・レビュー!

あなたは人に何かを伝えた時、「自分が伝えたいことが100%相手に伝っているだろうか?」と疑問に思ったことはないだろうか?

「伝えた」としても「伝わる」とは限らない。

本書の冒頭にはこんな辛辣な言葉が述べられている。

「多分伝わっているだろう」「言わなくてもわかってくれるはず」

友達同士の他愛もない会話であればそれでもよいもしれない。しかしビジネスで他人に物を売る場合、その物の魅力を上手く伝えなければお客さんは商品を買ってはくれない。

阿部 広太郎著『コピーライターじゃなくても知っておきたいこころをつかむ超言葉術』は、題名のとおりコピーライターじゃない人にとっても知っておきたいコピーライティングの知識が詰まった一冊だ。

1 『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を読む事で得られるメリット

例えば仮に会社で物を作ったとして、商品がいくら魅力的であったとしてもそれを世の中に伝える言葉(キャッチコピー)がなければお客さんは商品を買ってはくれない。また物を売るだけではく、何かを企画し、形のない物の魅力を相手に伝える時も言葉で表現しなければならない。さらには就職の面接の際も言葉によって面接官に良い印象を残すことが出来なければ、その企業に就職できる可能性は低いだろう。

このようにコピーライターの仕事をしている人に限らず、社会で生きていく為には言葉の力、いわゆるコピーライティングの知識があれば得をする場面は多い。

本書を読むことでコピーライティングの知識を身に着け、語彙力を鍛えることは人生において大きなメリットをもたらしてくれることは一目瞭然だ。

2 著者「阿部広太郎」さんはこんな人

阿部広太郎さんは埼玉県三郷市出身。2004年慶應義塾大学経済学部入学。大学卒業後、2008年に電通に入社。現在は自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、幅広いメディアでコピーライターの仕事をしている。

そんな阿部広太郎さんだが新入社員の頃、コピーライターになりたくて猛勉強するも先輩に「向いてないかもね。」と言われてしまった事もあるらしい。

しかし、あきらめることなく質より量で広告コピーのコンテストに応募しまくったそうだ。その結果、宣伝会議賞を受賞し、コピーライターの登竜門である、東京コピーライターズクラブの新人賞も受賞した。

そして誰もが知る代表作のひとつに、東進ハイスクール林修先生の「いつやるか?今でしょ!」などがある。

ここから言えることは、阿部広太郎さんは何も特別な人間ではなく、努力によって心ををつかむコピーライターの技術を得たということだ。つまりコピーライターの技術は勉強すれば誰でも身に着けることができるということだ。

3 「こころをつかむ超言葉術」のPOINT①【マイ定義を持とう】

阿部広太郎さんはそもそも伝えるとは何か?を考えたとき自分なりの「マイ定義」持つことを推奨している。

例えば、ラーメンの食レポに行った人が全員言葉を揃えたように「おいしい」とだけ言っても受け手からすれば、「おいしいのはわかるけど、どのようにおいしいのかまったく伝わらない。」ということになってしまう。

なのでおいしいという言葉を使わずに、ラーメンのおいしさを表現してみる。例えば「スープは●●系濃厚スープで、口の中でうま味が広がります。」とか「麺は細(太)麺のしこしこ麺でスープとしっかりからみます。」など実際に自分が感じた事を言語化することが重要ということだろう。

このように「おいしい」という便利な言葉を使わずにおいしいを伝えようとすると、それを伝える為に様々な言葉使おうとする意欲がわき、「おいしい」を伝えるためのボキャブラリーも増え、相手にも「おいしい」がより一層伝わるということだ。

4 「こころをつかむ超言葉術」のPOINT②【短く強い言葉を】

年末に発表される新語、流行語大賞にはその一年で印象に残る言葉が選定されている。

そしてそのすべてに共通することはどれも短い言葉であることだ。

阿部広太郎さんは「短くシンプルでなくては、こころに残るかは別とし、そもそも受け取ってもらえない。」と言っている。

これがよくわかる例えがYouTube動画のタイトルだと思う。基本的に人間はめんどくさがりな生き物なので、おもしろい物は大好きだが、つまらない、若しくはつまらなそうな動画はすぐにスワイプしてしまうはずだ。しかし短くシンプルなタイトルでわかりやすければ最低限目に止まるし、さらに面白そうなサムネイルだったらみてみようと思うはずだ。

私たちが普段何気なくみている動画のタイトルやサムネイルにも人が思わず目を止めるようなコピーライターの技術が使われているというわけだ。

5 「こころをつかむ超言葉術」のPOINT③【人は言葉を食べている】

本書では言葉の重要さが非常によくわかる事例が紹介されている。

その事例とは、福岡出身のレストランオーナーがアメリカで明太子を「Cod roe(タラの卵)」という商品名としてだしたところ、アメリカ人には魚の卵を食べるという文化がなく、「これはなんだ気持ち悪い」と酷評されてしまったらしい。

しかし商品名をCod roe→HAKATA spicy caviar(博多スパイシーキャビア)にしたところ、爆発的にヒットしたそうだ。

つまり、人はまず食べる前に言葉による先入観でその物をイメージして食べているということだろう。それほど言葉が受け手に与えるイメージが重要であるということだ。

このように商品名1つをとってもコピーライティングの知識があるかないかだけで、売上に与える影響は計りしえないないものがあることがわかるはずだ。

6 「こころをつかむ超言葉術」のPOINT④【言外の情報があるかどうか】

言外の情報とは何か?それはその言葉を受け取った人が、「情景が思い浮かぶ文章」のことである。

例えば、本書では「I LOVE YOUの訳し方」で「半分こにしようか」というコピーが紹介されている。これを書いたヤギワタルさんという方は「妻のダイエットしたい気持ちと、お菓子をたべたい気持ちの葛藤を普段から感じていたのでこのコピーが生まれた気がします。」と言っている。

このように実体験から出てきた何気ない一言には愛情が詰まっていて、それを聞いた人は自分の経験に照らし合わせ、その情景が浮かんでくる事だろう。また「半分にしよう」でなく、「半分こ」、「しようか」と語りかけるような言葉がよりその情景を想像させる。

単純に「I LOVE YOU」とストレートな感情表現も時良いが、このように「情景が思い浮かぶ文章」の方が人が心を動かされやすい言葉であることがわかるはずだ。

7 まとめと感想

私がこの本を読んで思ったことは、コピーライティングの知識は人生において非常に重要なスキルであるということだ。この知識を知る人と知らない人では人生の難易度が変わってくるのではないかと思う。また本書を読んだことによりこれまで生活してきた中で何気なく目にして、選択してきたものには、必ずコピーライティングの言葉術が活用されているということに気づかされた。

そして逆に私たちがこのコピーライティングの技術を身に着け、活用するためには、なんでも良いのでアウトプットすることが重要ではないかと思う。

そしてアウトプットする際に自分が使う言葉に対して、相手が「どのような感情を抱くのだろうか?」と真剣に言葉を選定してから行ってみよう。そしてそれに対するフィードバックから学びをえることでコピーライティングの技術が鍛えられていくのではないかと思う。

本書には私が紹介したもの以外にもコピーライターでなくても知っておきたい言葉術がたくさん書かれている。是非手に取って読んでみてはいかがだろうか。

本書には私が紹介したもの以外にもコピーライターでなくても知っておきたい言葉術がたくさん書かれている。是非手に取って読んでみてはいかがだろうか。